2016 Fiscal Year Annual Research Report
干潟域の共生性ハゼ科魚類による巣穴利用の進化と適応
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15J12531
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
邉見 由美 高知大学, 大学院総合人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アナジャコ類 / スナモグリ類 / 巣穴利用 / 片利共生 / 多様化 / ハゼ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究の目的は、ハゼ類による甲殻類の巣穴利用に関する片利共生の基礎研究を築くことである。複数の巣穴共生系において片利共生に関する克明な定量的データを得るため、以下の研究を進めた。 ヒモハゼおよびウキゴリ属の複数種は、アナジャコ類やスナモグリ類の巣穴を産卵に利用することが知られている。しかし、仔稚魚にどこに分布して生息しているのか、明らかでない。そこで、昨年度に引き続き、ヒモハゼの仔稚魚出入動態を明らかにすることを目的として、高知県須崎湾における仔稚魚出入調査を行った。本研究の結果、湾奥部で行った表・中層で前屈曲期仔魚、近底層で屈曲期から稚魚期までが出現した。このことから、ヒモハゼは孵化後、鉛直方向に分散し、湾外には出ず、着底は湾内で行われることが明らかになった。 ハゼ類による甲殻類の巣穴利用には、隠れ家としての利用とともに、産卵巣としての利用についても知見がある。スナモグリ類の巣穴にハゼ類が卵を産みつける状況について、過去に九州大学で行われた調査資料を用いて詳細な解析を行った。その結果、ウキゴリ属のエドハゼがニホンスナモグリの生息する巣穴の上部に産卵巣を作ることが明らかになった。ニホンスナモグリの巣穴の上部には海水の流出入に用いられる一様の直径の細い坑道があるが、エドハゼの産卵巣は細い坑道を拡張して太くなっていたことから、ハゼ類により宿主甲殻類の巣穴改変が行われることが初めて明らかになった。 ツマグロスジハゼが条件的共生することが知られるテッポウエビの巣穴構造を明らかにした。その巣穴は複数の漏斗状の巣穴入り口をもち、長いが浅い構造であることがわかった。また、鋳型採取された他のテッポウエビ属の巣穴構造をまとめた結果、共生ハゼの有無にかかわらず、巣穴の長さや深さ、入り口の数など、その特徴は広いバリエーションを示し、巣穴構造は種特有のものであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウキゴリ属仔稚魚の分布については、解析に十分な個体数が得られなかったが、ヒモハゼの湾内における仔稚魚の分布が明らかになった。 その他の点では概ね当初計画の通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、巣穴利用の地理的広がりについて調査する。また、得られた成果を学会大会で発表し、原著論文化する。
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