2016 Fiscal Year Annual Research Report
触覚誘導性視覚マスキングの神経基盤―自閉症における神経接続不全との関連性の解明
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15J12599
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
井手 正和 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 触覚誘導性視覚マスキング / 感覚間相互作用 / fMRI / 触覚 / 二次体性感覚野 / 視覚野 / 知覚抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は触覚誘導性視覚マスキング(Touch-induced visual suppression: TIVS)の神経基盤を明らかにするための研究を進めた。TIVSとは、画面上の視覚刺激ととも時間的・空間的に一致した形で指先に触覚刺激を対提示すると、視覚刺激の知覚が抑制される効果である(Ide & Hidaka,2013)。昨年度は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用い、TIVS生起中の脳活動の計測を実施し、今年度は引き続きその解析を進めた。触覚刺激を視覚刺激と空間的に同側に提示した条件では、触覚刺激を提示しなかった条件に比べ、両側V1、V2、V3v、V3d、右二次体性感覚野(S2)、両側小脳、視床、上側頭回の脳活動の低下が見られた。TIVSの生起量を共変量とし、全脳でブランク画像に比べて脳活動が低下した部位を調べたところ、右V1、V2で顕著だった。これらのことから、右V1とV2をシードとし、これらの部位の脳活動抑制量と関連する部位をPsychophysiological analysis(PPI)で解析したところ、S2と島皮質との間に機能的結合が見られた。この結果は、TIVS生起時には、触覚入力によって生じた体性感覚野の活動が強ければ強いほど、視覚野の活動が抑制されたことを示唆する。これらのことから、体性感覚野の活動が視覚野に対してモジュレーションをかけることによって、視知覚の抑制が生じている可能性が考えらえる。これらの成果をまとめた論文はScientific Reports誌に掲載された(Ide, Hidaka, Ikeda, & Wada, 2016)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年取得したfMRI画像を基に、解析を進めた。異なる脳領域間の機能的結合を検討することで、二次体性感覚野と視覚野の間の神経接続がこの効果に関わる可能性を示すことができ、成果を論文としてまとめた(Ide, Hidaka, Ikeda, & Wada, 2016, Scientific Reports)。この研究の目的は、異なる脳領域間の神経接続の低下が報告されている自閉スペクトラム症(ASD)者の知覚特性を明らかにすることである。当初の計画では、最終年度にfMRIの解析を行う予定であったものの、それを先に実施することになった。これにより、TIVSが異なる脳領域間の神経接続を背景にする現象であることを確認した上で、次年度以降、この効果を用いてASDの知覚特性との関係性を検討することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる脳領域間の神経接続によって生じる知覚抑制効果(TIVS)を用い、ASDの知覚特性との関連性を検討する。昨年度までの実験の過程で、大学生の実験参加者に自閉傾向を測る質問紙(AQスコア)への回答を求めていた。これまでのところ、TIVSの生起量とAQスコアとが相関する傾向が見られている。この点を確認するため、より多くの参加者に対してTIVSの課題を実施し、個人個人の自閉傾向との関連性を検討する。このことによって、TIVSがASDの神経基盤として注目されている離れた脳領域間の神経接続の低下を定量化することができる課題であることを確認する。
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