2017 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞の浸透圧応答とAVPニューロンへの再生・分化メカニズムの解明
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15J40001
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
佐藤(沼田) かお理 福岡大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | AVPニューロン / 高浸透圧 / 細胞容積 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、AVPニューロンにおいて、高浸透圧条件下で活性化し、flufenamic acid(FFA)に感受性があるイオンチャネルについて、主にパッチクランプ法を用いて解析を進めた。昨年度のパッチクランプ法の電圧固定法を用いた研究で安定的に記録できるようになったカチオンチャネルは、高浸透圧条件下で活性化し、FFA投与により抑制されるものと更に活性化されるものとの2種類存在する事が明らかになった。FFAによって更に活性化する電流は、高浸透圧条件下で活性化される電流とは別のタイプのものである事が示唆されたが、今年度中に同定する事ができなかった。このイオンチャネルの同定は、平成30年度に行う予定である。 AVPニューロンの自発的発火活動は、高浸透圧条件下において増大し、FFAで抑制されることが明らかになった。自発的発火活動は、ニッケルでも同様に抑制された。高浸透圧条件下におけるAVPニューロンの容積調節メカニズムにおいて,高浸透圧刺激によって細胞容積が減少したまま、その容積を維持する現象が見られた一方で、FFAを投与すると細胞容積が減少した後に元の大きさに回復する現象が昨年度までの研究により確認された。この現象は、ニッケルを投与した時や、テタヌス毒で前処理したAVPニューロンでも確認された。以上の結果より、AVPニューロンは、高浸透圧条件下における容積調節能を保持しており、高浸透圧刺激による容積減少後に容積回復(regulatory volume increase: RVI)が起こることが明らかになった。同時に、体内を循環する血液が高浸透圧になった時にAVP分泌量が増大することによる分泌性容積減少(secretory volume decrease: SVD)が起き、AVPニューロンの容積が小さくなるために高浸透圧性細胞縮小後の容積回復が見かけ上抑制されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、AVPニューロンのカチオン電流を安定的に取れる条件が見つからず、パッチクランプ法を用いた実験が停滞していたが、平成28年度末にやっと安定的に実験が出来る条件が見つかったお陰で、平成29年の春から1年間で、飛躍的に研究が進んだ。更に、これまでずっと謎であったAVPニューロンが高浸透圧条件下において容積が回復しない理由をAVPニューロンの分泌と結びつけることでやっと納得いくまでのデータを取ることが出来、論文作成を開始するまで漕ぎ着けることが出来た。これらを考慮すると、平成29年度もおおむね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究から明らかになった、高浸透圧条件下で活性化し、FFA投与により抑制されるものと更に活性化されるものとの2種類のイオンチャネルにおいて、平成30年度に同定する。平成29年度の実験より、高浸透圧条件下でAVPニューロンの膜の脱分極と自発性発火活動の増大が確認されたが、これらの現象に高浸透圧条件下で活性化する上記2種のチャネルが関与するかどうかについて検討する。同時に、平成29年度までに明らかになった研究成果を論文にまとめて投稿する。
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Research Products
(2 results)