2015 Fiscal Year Annual Research Report
栄養源認識と有性生殖開始をつなぐシグナル伝達経路の解析
Project/Area Number |
15J40037
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
大坪 瑶子 基礎生物学研究所, 細胞応答研究室, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / 栄養源認識 / 有性生殖開始 / TORキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、栄養源認識と有性生殖開始をつなぐシグナル伝達経路の分子機構の解明を目標として、分裂酵母を用いて、真核生物に広く保存されたTORキナーゼ経路の解析を進めている。これまでの研究で、TORの変異株 (tor2変異株) と同様に栄養源が豊富な環境でも有性生殖を開始してしまう変異株を複数取得していた。これらの変異株をhmt (hyper mating and temperature sensitive) 変異株と名付けて解析を行った。hmt変異株でTOR複合体1 (TORC1) 経路の活性化状態を見るために、TORC1依存的にリン酸化されるAtg13とPsk1のリン酸化状態を調べたところ、hmt10以外のhmt変異株では、Atg13とPsk1のリン酸化が低下していた。hmt変異株であるアスパラギニルtRNA合成酵素変異株 (hmt1)、プロリルtRNA合成酵素変異株 (hmt3)、 RNAポリメラーゼIIIサブユニットrpc34変異株 (hmt7)にtor2 を過剰発現させると、制限温度下における接合率が著しく低下した。また、アスパラギニルtRNA合成酵素などの複数のアミノアシルtRNA合成酵素がTORC1と結合していることも確認した。 hmt変異株の原因遺伝子の多くがtRNA関連因子だったことから、窒素源枯渇時のシグナル伝達経路にtRNA自体が重要な役割を担っている可能性が出てきた。窒素源枯渇時にtRNAの量に変化が起きているか検討するために定量RT-PCRを行ったところ、アスパラギンtRNAなどのtRNAで窒素源枯渇時の発現量が低下していた。 これまでに、TORC1が有性生殖開始に関わる転写因子Ste11をリン酸化することを確認していた。in vitro kinase assayにより、TORC1のSte11によるリン酸化部位を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載したアミノアシルtRNA合成酵素とTORC1との関係を検討する解析、栄養源枯渇時のtRNA量の変化の観察、TORC1の新規標的因子Ste11の解析に関しては、ほぼ計画通りに推進することができた。 hmt10以外のhmt変異株では、TORC1の活性状態が低下していることが明らかになった。このことから、hmt10以外のhmt変異株の原因遺伝子として特定されたtRNA関連因子は、TORC1経路の上流に存在し、TORC1の活性化に関与していると考えられた。hmt変異株にtor2を過剰発現させると、接合率が低下したことから、遺伝学的にもこれらの因子がTORC1経路の上流に存在する可能性が示唆された。 栄養源枯渇時のtRNA量の変化に関しては、定量RT-PCRにより半数以上のtRNAで発現量が低下しているという興味深い結果が得られた。またtRNA配列を多コピーベクターにクローニングすることができた。 TORC1の新規標的因子Ste11は、TORC1によって2カ所リン酸化されることが明らかとなった。この部位をアラニンに置換した非リン酸化型の分裂酵母変異株を作製し、現在表現型の観察を進めている。転写因子Ste11以外のTORC1の新規標的の候補となる因子群の組換えタンパク質については、現在作製途中である。また、TORC1構成因子の組換えタンパク質についても作製途中である。TORC1によるSte11のリン酸化部位を決定する解析が順調に進んだため、今年度はそちらを優先して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
アミノアシルtRNA合成酵素やpol III サブユニットなど、tRNA関連因子がTORC1経路上に存在する可能性が出てきたので、これらの因子がTORC1経路にどのように作用して有性生殖開始を制御しているのか、より詳細に検討する。また、tRNA関連因子とTORC1経路に関わる新規因子の単離を目指して、tRNA関連因子の変異株やTORC1変異株を使って、スクリーニングを行う。栄養源枯渇時のtRNA量の変化に関しては、今回の定量RT-PCRでは、maturationが完了していないtRNAとmatureなtRNAを区別することができていない可能性がある。そこで、maturationが完了したtRNAだけを測定できる定量RT-PCR法や、ノザンブロットによる解析の準備を進めている。また、作製したtRNA配列をクローニングした多コピーベクターを利用して、tRNAを人為的に過剰発現することによる有性生殖への影響も検討する。 TORC1によるSte11のリン酸化部位が決定したので、リン酸化によってSte11がどのような制御を受けているのかを検討する。また、性分化に関わる組換えタンパク質が作製できたら、TORC1の新規基質となり得るか、in vitro kinase assayによって調べる。さらに、TORC1構成因子の組換えタンパク質が作製できたら、TORC1活性を持つ最小単位の複合体の構築を試みる。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Regulation of TORC1 signaling in meiosis under nitrogen starvation2015
Author(s)
Nakashima, A., Yamashita, A., Otsubo, Y., Kamada, S., Uritani, M., and Kikkawa, U.
Organizer
The eighth international fission yeast meeting
Place of Presentation
生田神社会館(兵庫県・神戸市)
Year and Date
2015-06-21 – 2015-06-26
Int'l Joint Research