2015 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸鎖電子伝達系を構成する酵素複合体シトクロムbdの構造および機能解析
Project/Area Number |
15J40158
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仲庭 哲津子 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 呼吸鎖電子伝達系 / 膜タンパク質 / シトクロム末端酸化酵素 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物はエネルギーを獲得するために、食物として取 り込んだ物質を分解するエネルギー代謝を行う。この エネルギー代謝で ATP の多くを産生する中心部で は、細胞膜に埋まったいくつかの膜タンパク質が働 く。この膜タンパク質の集合体を呼吸鎖電子伝達系と 呼ぶ。本研究は、呼吸鎖電子伝達系の主要な膜蛋白質群の中で唯一結晶構造が明らかにされていない膜蛋白質複合体シトクロム bd(Cytbd)の新規な構造を高分解能で決定し、さらに得られた構造を用いて,これまで立体構造が明らかになっているミトコンドリアの末端酸化酵素であるシトクロムc酸化酵素の活性中心と構造比較を行い,活性中心とその周辺環境、さらには基質結合部位やプロトンチャネルの構造を同定など、電子伝達反応機構を原子レベルで解明することを目的とする。先行研究では、これまでに Cytbd 複合体の蒸気拡散法による結晶化に成功し、すでに 6 オングストローム分解能の回折強度データを得ている。本年度はさらなる高分解能化を目指して、脂質の欠損防止を狙った精製方法の改善、結晶化法の改良および脱水法の導入を試みた。これらの手法を用いて得られた結晶は SPring-8 の生体超分子専用ビームライン BL44XU において回折測定を実施し、回折分解能 6 オングストロームと現結晶と同程度の反射であった。今後は、結晶の更なる最適化と脱水法の改善を中心に結晶の高分解能化を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シトクロムbd複合体 (Cytbd複合体) の高分解能化に向けて、本年度は以下の項目を実施した。(1) Cytbd 複合体のストレプトタグを導入したワンステップ精製法の導入により、精製純度の高いサンプルを得ることに成功した。(2 )得られたサンプルを脂質キュービックフェーズ法 (LCP 法) による結晶化を行った。その結果、微結晶を得ることに成功し大型放射光施設 SPring-8 にて回折X線測定を行った。その結果、微結晶ながらも7 オングストローム分解能と現結晶と同程度分解能であり、今後の結晶最適化に期待が持てる結果であった。(3) 脱水効果による分解能改善は脱水法 Humid Air and Glue-coating method (HAG 法) と抗凍結剤交換作業の改善を試みた。HAG法はSPring-8 にて実施し、分解能の改善には至らなかったが、本結晶は非常に高い湿度条件化で安定である、すなわち結晶中の水分含量の減少が高分解能化の鍵であることが明白となった。さらに(4)耐熱性のCytbd複合体結晶作製による分解能向上を目指し耐熱性シアノバクテリアの発現系構築に成功した。発現確認を行った結果、現時点で生産量が低いことから、現在発現検討中である。以上の結果より、本年度の実施事項はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の取組みでは、劇的な分解能向上は見られなかったが、精力的にシトクロム bd (Cytbd) 複合体結晶分解能の向上に努めていた。その矢先、非公開であるが欧州にて立体構造が解析されたとの第一報を受け、先行グループの構造より、より高分解能での構造決定を目指す方針に目標修正を行った。本複合体は17回膜貫通と、通常の膜タンパク質に比べて膜貫通部位が多く、良質な結晶を得ること、ましては高分解能結晶を得ることは極めて困難である。そこで、膜貫通領域の少ない膜タンパク質を用いて Cytbd 複合体結晶の高分解能化に向けた研究手法の確立を行うこととした。具体的には結晶化法に LCP 法、結晶の脱水法に HAG 法を用い、これら手法の詳細な最適化を実施する。最終的には確立された方法を Cytbd 複合体結晶に適応し、初期位相モデルに欧州グループの構造モデルを用い、分子置換法でより高分解能での結晶構造解析を完遂する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Identification of Protein Kinase CK2 Inhibitors using Solvent Dipole Ordering Virtual Screening.2015
Author(s)
Isao Nakanishi, Katsumi Murata, Naoya Nagata, Masakuni Kurono, Takayoshi Kinoshita, Misato Yasue, Takako Miyazaki, Yoshinori Takei, Shinya Nakamura, Atsushi Sakurai, Nobuko Iwamoto, Keiji Nishiwaki, Tetsuko Nakaniwa, Yusuke Sekiguchi, Akira Hirasawa, Gozoh Tsujimoto, and Kazuo Kitaura.
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Journal Title
Eur. J. Med. Chem.
Volume: 96
Pages: 396-404
DOI
Peer Reviewed
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