2016 Fiscal Year Annual Research Report
イネ澱粉生合成関連酵素の酵素間相互作用に着目した澱粉構造制御機構の解明
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15J40176
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
クロフツ 尚子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | イネ / 澱粉 / 相互作用 / タンパク質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
米は世界人口の半数(35億人)の食糧や、食品・工業原料として多岐に利用されており、年間4億トンも消費される重要な穀物である。澱粉は米の80%以上を占め、澱粉構造の違いが炊飯・加工特性を左右する。用途に応じて求められる澱粉特性は多様であるが、澱粉構造を制御する分子機構は未解明な部分が多く、必ずしも用途に最適な澱粉構造をもつ米は創出されていない。本研究では、澱粉生合成関連酵素のタンパク質間相互作用を介して形成される、酵素複合体の構成とその活性や産物の構造を明らかにすることで、澱粉構造の制御機構を解明することを目的とした。 昨年度、野生型のイネにおいて、イネ登熟胚乳で発現するほぼ全ての澱粉生合成関連アイソザイムが、高分子量で活性のある酵素複合体を形成していることを明らかにした。それを受けて、今年度は依頼があった総説を執筆した。 また、野生型のイネにおいて形成される約700kDaの高分子量複合体の主成分と考えられるStarch synthase (SS)IIIaが欠損したイネ変異体を用いて、複合体の構成成分の変化を明らかにした。 SSIIIa欠損イネ変異体の登熟種子から抽出した可用性タンパク質をゲル濾過法で分離し、そのパターンを野生型のものと比較した。野生型では400 kDa以上に溶出するSSIの量は少ないが、SSIIIa欠損変異体では400 kDa以上に溶出するSSIの量が顕著に増加した。これまでの研究から、SSIIIaが欠損すると、SSIの発現量が増加することは明らかになっていたが、本研究の結果から、増加したSSIがSSIIIaの欠損を相補して、高分子量の酵素複合体の形成に関わっている可能性が示唆された。 上記のイネ変異体はSSIIaの活性が低いジャポニカ米を親にしている。今後、SSIIaの活性が高くなった場合に、他のSSおよびBEアイソザイムがどのような複合体を構成するかを研究するために、新たな遺伝子組み合わせの変異体を作出し、その澱粉構造の分析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、野生型のイネを用いた澱粉生合成関連酵素の酵素複合体の分析に大幅な時間がかかると見込んでいたが、研究が順調に進み、論文や総説を発表するところまでこぎつけたから。
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Strategy for Future Research Activity |
ジャポニカ米の登熟種子に含まれる可溶性のSSアイソザイムは、SSIが6割、SSIIIaが3割を占める。SSIとSSIIIaの両者が完全に欠損すると不稔になるが、いずれかの活性が少しでも残っていると稔実する。 本研究で明らかになったSSIIIa欠損イネ変異体の澱粉生合成関連酵素の構成成分の変化と、科研費若手(B)で明らかになったSSI欠損イネ変異体の澱粉生合成関連酵素の構成成分の変化を基盤として、SSIの活性が低下しSSIIIaが欠損した二重変異体の澱粉生合成関連酵素複合体の構成を明らかにする。
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Research Products
(9 results)