2016 Fiscal Year Annual Research Report
寄生者が害虫の変態を操作する:寄主昆虫の内分泌系をめぐる寄生バチと寄生バエの攻防
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15J40180
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
田端(一木) 良子 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ヤドリバエ / 捕食寄生者 / 寄生バチ / 変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までの調査で、ハエが寄生した場合は、ハチの有無に関わらず、未寄生時よりも寄主の前蛹化が約1日早まることが明らかとなり、ハエが寄主の変態(前蛹化)を積極的に操作している可能性が示唆された。そこで、平成28年度はまず寄主の発育とハエの発育との関係を詳しく調査した。4齢0日目、5齢0日目、6齢(終齢)0日目に、ハエを1回だけ産卵寄生させた寄主を経時的に解剖して、ハエ幼虫の齢と大きさの変化を詳細に調査した。寄生時の寄主齢が進むほどハエの発育日数は短くなった。ハエ幼虫は、寄主が4-5齢の間は中腸壁と囲食膜の隙間で1齢のまま待機し、寄主が6齢(終齢)になると2齢に脱皮、さらに未寄生時よりも1日早い終齢4-5日目に寄主の囲食膜を排出(ガットパージ)させ、3齢に脱皮した。次に、ハエを寄生させた4齢寄主からハエ1齢幼虫を取り出し、5齢と6齢の寄主にそれぞれ移植した場合、寄生から囲蛹化までのハエの発育日数は5齢の移植で13日、6齢移植で9日と有意に違いが見られた。これらのことから、寄主の発育とハエの発育は密接な関係を持ち、寄主の前蛹化を早める作用を行うのはハエ2齢幼虫である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、寄生バエが積極的に寄主の前蛹化を誘導するという現象を見いだし、その要因を解明するために寄生バエと寄主の発育の関係を詳細に調査した。その結果、ハエと寄主の発育は密接な関係を持ち、ハエが2齢時に必ず寄主がガットパージすること、さらにハエ2齢幼虫が特定の酵素を分泌し寄主の囲食膜を分解している可能性があることなどを明らかにした。平成28年度中にこれらの実験結果を学会で発表し、論文作成の準備にも取りかかったことから、期待通り研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ハエ2齢幼虫が中腸で分泌する酵素の同定を行う必要がある。また、寄生者が寄主の変態ホルモンの分泌に影響を与えることで変態を操作している可能性についても検証する必要がある。
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