2016 Fiscal Year Annual Research Report
都心部再開発による都市郊外里山生態系サービスの持続的利用にむけた制度の可能性
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15J40201
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
三瓶 由紀 和歌山大学, システム工学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 里山 / 生態系サービスへの支払い / 制度的対応 / GIS / 制度運用 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に、1)堺市における制度運用による里山管理の効果、2) ニューヨーク市における生態系サービスへの支払制度の概要と運用状況の把握、を実施した。 堺市における里山管理の効果については、工場立地法の敷地外緑地制度を活用した制度運用により管理が実施された里山の管理状況の把握ならびに植生調査を実施した。その結果、ツツジ類が比較的高い比率で生育しており、春の開花期にはツツジの花見を楽しめる地域として活用できる可能性が高いこと、間伐や下草刈りが行われた場所では、コナラなどの樹木の実生の出現が確認されており、林床管理を続けることで、コナラ林の復元及び多様な草本植物種の出現が期待できることなどが明らかになった。 また、ニューヨーク市における生態系サービスへの支払制度の概要と運用状況の把握については、水源域保護プログラム(Watershed Protection Program)の一つである農業保全地役権を対象に、持続可能な生態系サービスの供給のために,どのような仕組みを有しているのか,どのように都市と郊外を結びつける工夫が行われているか、という観点から、制度の特性と運用状況について整理した。その結果、ニューヨーク市の制度は、行為の制限とそれに対する金銭的な保障にとどまらず、農場全体の計画的な保全・活用の視点を導入していること、農業経営の安定化と環境配慮型農業へのシフトを同時に促すことで、長期的な視点から生態系サービスの持続性を維持する仕組みを有することがわかった。また、科学的・客観的な審査による水源保全への効果の可視化と、地域住民の参画による地域の実情を踏まえた審査という、都市住民と地域住民のバランスのとれる形でのシステム運用もまた、都市と郊外との良好な関係構築に寄与しうると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,堺市による制度の運用事例について、その運用効果を把握すべく植生調査等を実施したほか、ニューヨーク市による生態系サービスへの支払制度に関して調査をおこなうためニューヨーク市立大学へと研究滞在を行った。得られた結果は既に査読論文として取りまとめており、来年度に予定されている調査・研究準備も既に終了していることから、今後も研究・調査が適切に行われることが期待出来る。 一方で、企業側が運用に乗り気ではなく制度運用がすすみにくい状況にあり、今後についても運用事例の増加は期待出来ないことが明らかとなった。そのため、当初予定していた運用効果の解明をすすめるには事例不足な状況にあり、課題の進捗はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、制度の検討過程と運用状況の関係性について整理を行うとともに、制度運用に至るための要因については堺市と名古屋市とでの比較を通じて分析を進める予定である。 運用事例のある堺市については,里山管理の効果について,里山管理2年目の植生変化を把握すべく、現地調査を実施する予定にしている。また、当該里山の生態系サービスを評価するため、GIS を活用した分析を現在すすめており、今後も収集済みのデータを活用し分析を行っていく予定である。 また、制度の運用がなかなかすすまず、事例が不足しているため、当初予定していた運用効果の解明が困難な状況になっている。制度の制定・運用の実施こそが、より重要な課題であり、そこに至るまでのボトルネックの解明が期待されると考えられる。そこで、調査計画の一部を修正し、類似の制度を検討はしたものの制定に至らなかった市町村などへのヒアリングや、企業へのヒアリングなどを追加し対応していきたい。
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Research Products
(5 results)