2016 Fiscal Year Annual Research Report
小児急性脳症の網羅的メタボローム・マイクロRNA解析を用いたバイオマーカー探索
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15J40217
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥居 ゆか 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ヒトヘルペスウイルス6型 / 脳症 / メタボローム解析 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)HHV-6脳症におけるメタボローム解析及びキヌレニン代謝物の脳血流関門に与える影響の評価 HHV-6脳症の血漿においてメタボローム解析を行い、痙攣重積例と比較解析を行った。結果、11種類の代謝産物が脳症で有意に変化していることがわかった。(脳症で有意に上昇:Kynurenine、Quinolinic acid、3-Amynobutyric acid、 Pipecolic acid 脳症で有意に低下:Butyric acid、cis-Aconic acid、Aspartic acid、Taurine Tryptophan、Hexanoic acid、Isocitric acid)このうちKynurenine とQuinolinic acidはインフルエンザ脳症でも有意に上昇していたため、脳症の病態に特に関連があると推察された。Quinolinic acidは脳血流関門を通過しないことが知られているが、幼若ラットを用いた実験でQuinolinic acidの投与により痙攣を誘発されるという報告があるため、Quinolinic acid自身が脳血流関門に影響を与える可能性を考えIn Vitro の脳血流関門モデルを用いたKynurenine 及びQuinolinic acid投与による影響を評価した。これらの結果は現在論文投稿中である。 (2)HHV-6脳症における網羅的マイクロRNA発現解析 HHV-6脳症の中で神経学的後遺症を遺す確率が高い病型であるAcute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion (AESD)症例の脳脊髄液におけるマイクロRNA発現プロファイルを痙攣重積症例を対照として比較解析を行うことにした。平成28年度は、脳脊髄液からエクソソームを抽出して、マイクロRNAを抽出する方法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の成果は大きくわけて二つある。 ひとつは、HHV-6脳症におけるメタボローム解析の結果、11種類の代謝産物が痙攣重積症例と比較して優位に変化していることがわかった。(脳症で有意に上昇:Kynurenine、Quinolinic acid、3-Amynobutyric acid、 Pipecolic acid 脳症で有意に低下:Butyric acid、cis-Aconic acid、Aspartic acid、Taurine Tryptophan、Hexanoic acid、Isocitric acid)なかでもインフルエンザ脳症と共通するキヌレニン代謝物の活性化がHHV-6脳症でも示された。これらキヌレニン代謝物と脳症の病態との関連についてサルの脳血管内皮細胞から構成される再構築モデルを用いた実験を行ったところ、Quinolinic acidが脳血流関門に影響を与える可能性が示された。 ふたつめに、急性脳症におけるマイクロRNA解析について実験を考案し、着手した。当初は血漿を用いたバイオマーカー探索を考えていたが、炎症が起きている脳実質に近い脳脊髄液を検体とすることにした。HHV-6脳症の中で神経学的後遺症を遺す確率が高い病型であるAcute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion (AESD)症例の脳脊髄液におけるマイクロRNA発現プロファイルを痙攣重積症例を対照として比較解析を行うことにした。現在、脳脊髄液からエクソソームを抽出できることを確認した。さらに、抽出したエクソソームからRNAが抽出できることまで確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はマイクロRNA発現の比較解析を中心に研究を進める。脳脊髄液のマイクロRNAの解析にあたり、課題となるのは、脳脊髄液から抽出されるRNA量が少ないことである。そこで研究者はエクソソームについて着目した。エクソソームとは細胞から放出される小胞体であり、その中に多くのマイクロRNAを含んでいることが知られている。さらに、脳脊髄液エクソソームのプロファイルは脳組織由来のエクソソームと近似しているという報告があり、脳実質の炎症を反映しうると考えられた。昨年度までの検討で、エクソソームの膜上に発現しているCD9およびエクソソームの膜には発現しないが細胞膜上に発現するCalnexinをイムノブロットで染色したところ、脳症髄液検体から抽出したエクソソームではCD9が発現しており、Calnexinは発現していなかった。以上からエクソソームを抽出できたことが示唆された。そこで、今度は脳症1例及び痙攣重積例1例から採取した脳脊髄液各1mlからエクソソームを分離し、さらにmiRCURY RNA Isolation Kit Cell and Plantを用いてRNA抽出を行った。QubitでRNA濃度を測定したところ、感度未満であったが、Taqman MicroRNA Assaysを用いて内在性コントロールであるmiR-16の発現をリアルタイムPCRで確認したところ発現を認めたことから、RNAが抽出できていることが示唆された。今年度はNEB Next Multiplex Small RNA Library Prep Set for Illuminaを用いてライブラリ調整法を検討し、対象疾患であるHHV-6脳症(AESD)5例およびHHV-6陽性痙攣重積症例5例を次世代シーケンサーで解析予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Primary psoas abscess caused by group A streptococcus in a child: Case report with microbiologic findings2016
Author(s)
Kamiya, Y. Hasegawa, T. Takegami, Y. Horiba, K. Ando, S. Torii, Y. Kidokoro, H. Kato, T. Natsume, J. Kawada, J. I. Ito, Y.
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Journal Title
Journal of infection and chemotherapy
Volume: 22
Pages: 811-814
DOI
Peer Reviewed
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