2015 Fiscal Year Annual Research Report
がん進行におけるガレクチン分泌の鍵をにぎる分子群の解明
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15J40258
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山口(宮川) 亜利沙 高知大学, 教育研究部医療学系, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ガレクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がんの進行において重要なプロセスと言われながらも、長年進展の停滞が続いている、ガレクチン1および3の細胞外への分泌機構解明に挑む。具体的には、申請者が独自に開発した第2世代EMARS法を用いて、ガレクチン1および3と会合を果たし、それらの分泌を司る分子群を明らかにすることを目的とした。本年度は、まず、ガレクチンの分泌を阻害する条件を探索した。4種の阻害剤(LY294002、Bafiromycin A、Y27632、U18666A)をそれぞれ添加した条件下、あるいは飢餓条件下にてがん細胞(HeLa, PC3, ABC-1)を培養し、培養上清中におけるガレクチン1および3の濃度について、ELISA法を用いて測定した。その結果、LY294002、Bafiromycin A、U18666Aを添加した場合にガレクチン1および3の分泌量が増大し、Y27632を添加した場合は未処理の場合と同等の分泌量であった。また、飢餓条件下にて同様にガレクチン量を測定したところ、HeLaおよびPC3細胞において、ガレクチン1・3の分泌量が増大した。さらに、細胞内のガレクチンの局在を確認するため、HeLa細胞においてガレクチン3に対する抗体を用いて免疫染色を行い、共焦点顕微鏡にて観察した。その結果、Bafiromycin A、Y27632、U18666Aの添加時あるいは飢餓培養時においてガレクチン3由来の小胞が確認された。続いて、EMARS反応に必要なベクターを作製した。ここでは赤色蛍光タンパクであるmDsRedにAPEX(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)とガレクチン1あるいは3の配列をつないだmDsRed-APEX-galectin1(あるいは3)ベクターを作製した。これらのベクターをHeLa細胞に導入し、ガレクチンの発現を共焦点顕微鏡により確認したところ、細胞質全体にその発現が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施前は、ガレクチンの分泌が抑制されると分泌経路のどこかに蓄積するのではないかと予想していたが、実際は、分泌が促進される条件において特定の細胞内小胞に濃縮されることを発見した。この結果から、この細胞内小胞を介してガレクチンが盛んに分泌されていると予想されるので、今後は同じ条件下でmDsRed-APEX-ガレクチンを用いてEMARS反応を行い、この細胞内小胞に含まれるタンパク質を同定することで、ガレクチンの分泌に関わる分子群の解明に繋がると期待される。既に、mDsRed-APEX-ガレクチン遺伝子の構築と細胞内オルガネラ内でのEMARS反応の条件検討を終えており、mDsRed-APEX-ガレクチンを用いるEMARS反応の実験に着手できる段階にきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の条件ではガレクチンの分泌を阻害することはできなかったが、分泌を促進し、細胞内に小胞が出現する条件を明らかにすることができた。これらを踏まえ、2年度目からは計画を変更し、最も分泌が促進され、且つ細胞内に大きい小胞が確認されたU18666Aを添加した条件下および飢餓培養条件下にて、EMARS反応の条件検討を行い、EMARS反応を用いたガレクチン会合分子の標識と同定を進める予定である。また、ガレクチン1についても、分泌促進時の局在および動態を上記ガレクチン3と同様に解析し、EMARS反応の条件検討を進める予定にしている。
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