2017 Fiscal Year Annual Research Report
がん進行におけるガレクチン分泌の鍵をにぎる分子群の解明
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15J40258
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山口(宮川) 亜利沙 高知大学, 教育研究部医療学系, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | ガレクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ガレクチンの細胞外への分泌機構解明に挑む。具体的には、申請者が独自に開発した第2世代EMARS法を用いて、ガレクチン3と会合を果たし、それらの分泌を司る分子群を突き止めることを目的としている。これを達成する研究計画として、(1)ガレクチンの分泌を制御する条件の探索、(2)ガレクチン-EMARS反応触媒酵素キメラタンパク質の発現、(3)EMARS反応を用いたガレクチン会合分子の同定を計画した。まず、ガレクチンの分泌を制御する薬剤の探索を行ったところ、LY294002、BafiromycinA、U18666Aによってさまざまな段階でオートファジープロセスを阻害すると、ガレクチン3の分泌が促進されることが明らかになった。また、特異的PP2A阻害剤のCantharidinによっても分泌が促進されることから、タンパク質リン酸化により分泌の制御が行われていることが示された。また、EMARS反応を触媒する酵素について検討した。これまでEMARS反応の触媒酵素としてHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を使用していたが、HRPは細胞質では活性発現しないので、HRPと同様の酵素活性をもつAPEX(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)の使用を検討した。APEXは、細胞質においても高い活性が保持されることが報告されている。そこで、赤色蛍光タンパクであるmDsRedにAPEXとガレクチン3をつないだmDsRed-APEX-ガレクチン3発現ベクターを作製し、HeLa細胞に導入した。ガレクチン3の発現を共焦点顕微鏡により観察したところ、細胞質全体に散在していた。上記の阻害剤を用いてガレクチン3の分泌を促進した際のmDsRed-APEX-ガレクチン3キメラタンパク質の挙動は、元来のガレクチン3の挙動と似ていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガレクチン3の分泌に寄与する分子を見つけるために、ガレクチン3の分泌を制御する薬剤の探索、ガレクチンとEMARS反応触媒酵素のキメラタンパク質の発現、ガレクチン3と会合する分子の同定を計画し、研究を進めてきている。これまで、前二者の計画をほぼ達成し、最後の段階のガレクチン3と相互作用する分子の同定に取り組み始めている。これまで、一連のオートファジープロセスを阻害すると、ガレクチン3の分泌が促進されることを見出した。さらに、プロテインホスファターゼPP2A阻害剤により、短時間に多量のガレクチン3が分泌されることを見出しており、未同定のタンパク質のリン酸化がガレクチン3分泌に直接的に関与する可能性が考えられる。細胞内におけるmDsRed-APEX-ガレクチン3キメラタンパク質の発現にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
ガレクチン分泌制御薬剤存在下でmDsRed-APEX-ガレクチン3キメラタンパク質を用いてEMARS反応を行うことにより、分泌時にガレクチン3と相互作用する分子を見つける。mDsRed-APEX-ガレクチン3キメラタンパク質が濃縮して存在する小胞、あるいは、細胞膜上の分泌サイトにおいてEMARS反応を行う予定である。また、PP2A阻害剤により、短時間に多量のガレクチン3が分泌されることを踏まえ、オートファジープロセスの最上流段階に寄与するPI3キナーゼの影響を受けるタンパク質、あるいは、PP2Aが関与するリン酸化タンパク質に焦点をあて、ガレクチン分泌に影響する分子を探索する。
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