2017 Fiscal Year Research-status Report
計算論的ラムゼー理論の開発を通じたNP困難性の拡張
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15K00006
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
天野 一幸 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30282031)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 論理関数 / 論理回路 / 計算量理論 / 離散構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大規模な離散構造の解析とこれに基づく計算量理論への展開を目指すものである.これに対して今年度得られた主な結果は以下の通りである. 1.論理関数の複雑さに関する様々な尺度の関係を明らかにする問題に対して,大規模な計算機実験を行い,感受度が3以下の全ての論理関数を初めて明らかにするとともに,これらの論理関数の性質を詳細に解析した.また,論理関数に含まれる非縮退型部分関数の個数について従来知られるものより厳密な理論値を得ることに成功した.本研究成果を,国際会議ISIT2017において発表した. 2.離散構造の性質に関する問題として,古くから研究されているポリオミノの2次元平面へのタイリングに関して,p4と呼ばれる群構造に基づくタイリングに関する新たな性質を明らかにすることに成功した.特に,SATソルバを用いた大規模な計算機実験,および,文字列の因数分解の性質に基づく理論的解析の両者を組み合わせることで顕著な結果を得ることができた.本研究成果を,国際会議ISAAC 2017において発表した. 3.論理関数の回路計算量に関する基礎的問題として,2層の多数決素子を用いて多数決関数を計算する回路を構成する方法に関して検討を行った.特に,計算機実験により得られたデータを理論的枠組みのもとで一般化するアプローチにより,従来研究でその存在が未解決とされていた回路の構成を与えることに成功した.本研究成果を電子情報通信学会論文誌に投稿し採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は当初平成29年度までの予定であったが,これまでに得られた様々な個別的成果に対して俯瞰的検討を加えることにより,より統合的な成果が得られるとの判断に至り,研究期間の1年間の延長を行うこととした.やや遅れているとしたのは,この点による.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた様々な個別問題に対する成果に対し,統合的な枠組みで検討を図り,本研究課題のとりまとめを行う.今年度は,特に,1.計算機援用型手法による多数決素子による多数決回路の構築と,その理論的一般化による回路深さと計算量の関係の解析,および,2.計算機実験を通じて得られる様々な大規模離散構造とその計算複雑さについての理論的意味付け等に重点をあて研究を行う. 得られた成果は,順次,計算量理論や離散構造に関する国内研究会,および,国際会議等の場において発表する.また,9月に米国Simons Instituteで行われる計算量に関するワークショップへ参加し,世界的研究者との討論等を通じて,研究成果の深化を図る.得られるフィードバック等も取り入れる形で,成果を論文として取りまとめ,国際論文誌へ投稿する.
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Causes of Carryover |
前年度までに得られた個別的課題に対する成果をより俯瞰的なものとするため研究期間の1年間の延長を行った.これに伴う成果発表等を平成30年度に行うこととしたため未使用額が生じた.本費用は,主に,1.国内研究会や国際会議において成果発表を行うための旅費,および,学会参加費,2.9月に米国で行われる計算量に関するワークショップに参加するための旅費,3.研究成果をまとめた論文の掲載料,として使用する.
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Research Products
(5 results)