2015 Fiscal Year Research-status Report
高密度不揮発性メモリの信頼性と速度を向上させるための符号化技術の開発
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15K00010
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
鎌部 浩 岐阜大学, 工学部, 教授 (80169614)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フラッシュメモリ / ILIFC / セル間干渉制約 / ランク変調 / 制約符号 / バランス制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
フラッシュメモリのセルを高密度で集積すると,セル間の干渉が大きな問題となる.また,多くのセルの情報を高速に読み出したときの信号から元のディジタルデータを復元するためには,記録された系列がバランス制約を満していることが要求される.本研究では,制約符号の理論を用いて,セル間干渉制約とバランス制約を同時に満す符号の漸近的な符号化率を計算するための,新しい方法を発見した.この方法はこれまでの方法よりも簡単な議論で漸近的な符号化率を求めることができると同時に,他の制約符号の漸近的な符号化率を計算にも容易に適用できる.制約の漸近的な符号化率は,その制約のために構成された符号の効率を評価するときに重要な値である. フラッシュのための符号の目的の一つは,ブロック消去間隔を長くすることである.ILIFCは,この間隔の最悪ケースを最適化する符号である.ILIFCに反転ビットを付加した符号化方法であるI-ILIFCは,平均性能がILIFCよりもよいことがシミュレーションによりわかっていた.本研究ではI-ILIFCの最適なパラメータを,シミュレーションと数学モデルを用いて求めた. ランク変調はフラッシュメモリのための符号化方法である.その符号化率は,変調方法から誘導されるグラフの頂点集合を,支配集合に分割する方法に大きく依存している.本研究では,従来よりも緩い条件のもとで,支配集合を求めるための理論を構成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 不揮発性メモリ向け符号化技術の平均性能の向上について:その基礎となる,制約符号化の符号化率の限界を計算する方法について結果を得た.この方法では,文脈自由文法と母関数の理論を使用する.これまでのところは,これらの理論の範囲内で結果を得ることができている.しかし,さらに広いクラスの制約に拡張しようとすると,制約を記述するためのさらに広い枠組みと,より一般的な母関数に関する理論が必要となることがわかっている.現在はそのための理論の調査をしている段階である.また,これによって,平均性能を理論的に解析する基礎が出来つつある.次の段階は平均性能を測るモデルの構築である.現在のところ目標の3,4割程度はできていると思われる. (2)ILIFC(インデックスレスインデックスフラッシュ符号)の性能向上について:平均性能を大きく向上できることが確認できている.理論的な解析もおよそ完了している.しかしながら,理論解析とシミュレーション結果との間に若干の乖離があるため,その理由を調べている段階である.本年度中に結果をまとめることができると思われる. (3)相変化メモリのための高い符号化率を持つ符号の構成:これまで公開された方法と本研究室で構成した方法よりも高い符号化率の符号を構成できている.しかしながら,適用範囲が現在のところ限定されているため,適用範囲を広げるように試みている. 現在までの結果を公表するようにまとめる段階に来ている. (4)フラッシュ符号への誤り訂正符号の適用:シンドローム符号化法を用いて,誤り訂正能力を持つ符号の探索を計算機を用いておこなってきたが,原理的には全探索であるため,時間がかかっている.計算結果は出てきているが,理論的な予想などを立てることができるほどのデータは得られていない.このテーマについては今後の計画の項で述べるように,方針を転換する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 不揮発性メモリ向け符号化技術の平均性能の向上について:フラッシュ符号のための制約符号の漸近的な符号化率を求める方法を,より広い制約のクラスに拡張する予定である.さらに広いクラスの制約に拡張するために,制約を記述するためのさらに広い枠組みと,より一般的な母関数に関する理論について調査を行う.また,有限的な制約と文脈自由文法で記述される制約の漸近的な符号化率を求めるための一般的な手続きの構築を進める予定である. (2)ILIFC(インデックスレスインデックスフラッシュ符号)の性能向上について:現在提案している方法の理論解析を行ったが,その結果とシミュレーション結果との間に若干の乖離がある.これを詳しく調べる予定である.その上で,本提案方式のさらなる高速化,高性能化を目指す予定である. (3)相変化メモリのための高い符号化率を持つ符号の構成:現在の符号は,熱の蓄積が生じにくいように構成している.今後は,これに加えて記録装置のための制約を含む制約を考え,より高密度記録に適した符号を構成する予定である.追加する制約としては,バランス制約や連長制約を考えている. (4)フラッシュ符号への誤り訂正符号の適用:シンドローム符号化法を用いて,フラッシュメモリのための誤り訂正能力を持つ符号の探索を計算機を用いておこなっているが,これまでのところ良い結果は出ていない.そこで次のように方針を変更する予定である.最近,フラッシュメモリのための制約符号のひとつであるランク変調に,巡回符号を用いて誤り訂正能力を付加する研究が進んでいる.この符号化法を次の方向で拡張する,(a)バランス制約などの他の制約との融合を研究する,(b)より広いクラスの誤り訂正符号とランク変調との融合を考える.
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