2015 Fiscal Year Research-status Report
グラフにおける歩道の存在不可能性の証明手法の開発とその応用
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15K00018
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神保 秀司 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (00226391)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | グラフ理論 / オイラー回路 / 離散構造 / 不可能性の証明 / アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
当面の目標である「15以上の奇数 n について n 点からなる完全グラフのオイラー回路で n - 4 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しない」ことの証明に対する手掛かりは得られていないが、このこと自体は想定の範囲内である。しかしながら、この予想の検証のために 15 点からなる完全グラフのオイラー回路で 11 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在するかしないかを計算機実験により決定することを試みているが状況は進展していない。その理由の一つは、実験用ワークステーションの処理能力を強化する計画が遅延していることであるが、最大の理由は、単純なアルゴリズムで処理した場合の計算時間の見積りでは平成28年度中の完了も不可能な程の計算時間を要することが判明しているからである。なお、平成27年度の研究発表「完全解析結果を使ったペンタゴが先手必勝であることの証明」は、本研究における計算機実験環境の試験を兼ねている。 一方、既に得られている「15以上の奇数 n について n 点からなる完全グラフのオイラー回路で n - 3 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しない」ことの証明を、新しい計算機実験の結果を取り入れることにより、従来よりも分かり易いものに改良することができた。この点について、平成27年度の研究発表「完全グラフのオイラー回路の性質の証明への計算機の活用」において部分的に公表した。この成果を含む論文を英文学術雑誌へ投稿する計画は比較的順調であり、平成28年度前半の達成を見込んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に書いたように、当初容易に実現できると想定していた「15 点からなる完全グラフのオイラー回路で 11 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在するかしないか」を計算機実験により決定する作業が単純なアルゴリズムと現有の計算機環境では極めて困難であることが判明している点が遅れている部分である。一方、既になされている「15以上の奇数 n について n 点からなる完全グラフのオイラー回路で n - 3 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しない」ことの証明を平成27年度後半に改良することができた点は、理論面で実質的な進展であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における当面の目標は、本研究固有である「オイラー回帰長」の語句を使えば「n が 15 以上の奇数のとき、n 個の点からなる完全グラフのオイラー回帰長が n - 3 であるか n - 4 であるかを決定する」ことである。現在、n が 15 以上の奇数のとき、n 個の点からなる完全グラフのオイラー回帰長は n - 4 であると予想しているが、この予想を補強するために 15 個の点からなる完全グラフのオイラー回帰長を計算機実験により決定することを試みている。そのためには、アルゴリズムの改良が必要であるが、同時に Amazon EC2 等の外部の有料計算機環境を使用して計算時間の短縮を試みたい。 一方、理論面の進展のためには、文献調査とともに国内の研究集会や国際会議などで十分に議論を積み重ねることが重要であると考える。平成28年度の後半には、このような場に積極的に出席する予定である。
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Causes of Carryover |
次の2点が主な理由である。一つは、所属機関である岡山大学の授業形態の大幅な変更 (60分授業と4学期制の導入) に伴う作業量の増加のため研究の対象となる学会への参加の機会が十分に確保できなかったことである。もう一つは、現在研究代表者が管理しているワークステーションのハードウェア増強のための2つの計画のうちの一つ (ソリッドステートドライブ (SSD) の導入) を平成28年度以降に延期したためである。このワークステーションに対して (a) GPGPU機能の追加と (b) 約5TBの SSD の追加を予定していたが、(b) については、記憶装置内部の構成の大幅な変更を伴うため平成27年度内の実施が困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
約 1TB の容量の2.5インチ SSD 5個、及びそれらをワークステーションに装着するためのアダプタを購入しワークステーションの処理能力の向上を図る。また、平成28年7月以降本研究に関連した研究会、シンポジウム等に複数回参加する。特に年度の後半に国際学会に出席することを計画している。
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