2017 Fiscal Year Research-status Report
錐最適化理論を用いた種別構成問題に対する効率的な計算手法の構築
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15K00032
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 真 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20386824)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 応用数学 / 数理最適化 / 錐最適化理論 / 種別構成問題 / 育種学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、錐最適化理論を用いて種別構成問題に対する効率的な計算手法を構築することである。種別構成問題は、多様性に関する制約を特徴とする数理最適化問題であり、育種学など多くの分野で現れる問題を数理モデル化したものである。特に多様性に関する制約は二次錐で表現できることが分かっており、この特徴の活用が短時間での求解における重要な要素となっている。平成29年度は本研究の3年目であり、主に以下の内容を行った。 [1] 均等展開となるような種別構成問題においては、0-1整数制約と二次錐制約が同時に課されていることが求解を困難としている。本研究では、Lifted Polyhedral Programming (LPP) 緩和を用いて、多数の線形制約で二次錐制約を近似する手法を構築した。また、多数の線形制約の大部分は不等式制約であるが、このうち最適解では等式で満たされるような制約を特定することで不等式制約を等式制約に置き換える手法として、LPP with active constraint selection method (LPP-ACSM) をソフトウェアに実装して数値実験を行った。 [2] LPP と LPP-ACSM の数値実験による評価について、国際学会 SIAM Optimization 2017 で発表を行った。 [3] 一般次元の二次錐を複数の低次元二次錐に分割する方法を導入し、切除平面法と混合整数線形計画問題に関する分枝限定法を組合せることで、均等展開タイプの種別構成問題に対する計算手法を構築した。 [4] 錐最適化理論において、一般には二次錐計画緩和は半正定値計画緩和よりも低精度の近似値を計算することが知られているが、これら2つの緩和の近似値が特定の入力データでは一致することを証明した。これにより計算コストの小さい二次錐計画緩和でも十分な近似を行えることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
[1] 特定の入力データにおいて二次錐計画緩和と半正定値計画緩和が一致することについては、数学的な証明を与えるだけでなく、数値計算も行い一致することを数値的にも確認をした。これにより、大幅な計算時間短縮が可能となった。また、もう少し強い仮定を置くと、線形計画緩和でも同じ近似値を得られることが示され、この場合には一層の計算時間短縮を達成している。この錐最適化問題に関する理論的な結果については学術雑誌に投稿するとともに、国内学会でも発表を行った。 [2] LPP と LPP-ACSM においては、LPP-ACSM のほうが最適解の存在しうる実行可能領域が狭くなるため、より簡単に最適解が得られることを期待していたが、数値実験では LPP に対するLPP-ACSM の優位性は、はっきりとは確認できなかった。このことは、不等式制約を等式制約に置換する際に非ゼロ要素数が増えている特徴に起因していることを見出した。この知見は、そのあとの錐分割手法のソフトウェア実装に反映させている。 [3] 錐分割手法については、計算手法の理論的性質を押さえてあり、数値実験を行っている。特に、切除平面法で追加していく切除平面については、従来手法では二次錐の線形近似に基づく単純なものであり各反復で1つの切除平面のみが追加されていたが、本研究では錐分割により複数の切除平面を同時に生成することが可能となった。これにより、少ない反復回数で良好な解を得ている。しかし、錐分割手法では、数値実験の過程に改良の余地があったため、再度数値実験を行ったことから、当初の想定よりも多くの時間がかかっている。 以上のことから、ある程度の進捗は得たものの、錐分割手法について論文の取りまとめが予定よりも若干遅れており、早急に行って学術雑誌に投稿することとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の計画では、まず錐分割手法の数値実験結果を整理し、論文として取りまとめ、Optimization Methods and Software などの学術雑誌へと投稿を行う。また、2018年度に開催予定の国際学会 ISMP 2018 において、錐分割手法の結果を発表する予定である。 これまでに構築してきた計算手法についても、より利用しやすいように整備をする。特に、不均等展開タイプの種別構成問題に対しては、ソフトウェアOPSELに既に組み込まれており簡単に実行できる状況になっているが、昨年度までに構築した均等展開タイプに対するヒューリスティクス、あるいは今年度に構築した錐分割手法については、順次整備を進める。また、OPSEL は Fortran ベースでプログラムが作成されているが、錐最適化理論のソフトウェアの多くは Fortran のインターフェイスを持っていないため、他のプログラミング言語による整備なども視野に入れることとする。 理論的発展としては、多様性に関する制約が複数となった場合にどのようになるかを検討することが課題の一つとして挙げられる。数理最適化手法で扱ってきた多様性に関する制約は分子血縁行列に基づく制約であるが、他の種類の制約を含めることも可能である。しかし、新しい制約の数学的性質は分子血縁行列とは異なるため、これまでの手法を直接適用することが困難である。例えば、分子血縁行列は測定誤差なく入力データが与えられると想定しているが、新しい制約の入力データには測定誤差が含まれると考えられる。これについては、数値シミュレーションなどを通して、どの程度の測定誤差を想定すべきか、などを把握し、統計的な視点も取り入れつつ計算手法を改良する。
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Causes of Carryover |
構築した錐分割手法が、当初の想定よりも整数計画問題の数学的性質を持っており、数理最適化の国際学会の中でも整数計画問題に関する研究者も多く参加する ISMP 2018 (2018年度開催予定) で発表を行った方がよいと判断したため、一部を平成30年度に繰り越している。
したがって、残額の主な部分については、ISMP 2018 への旅費および参加費に充てることとする。
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