2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00042
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 渉 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 講師 (30303027)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 時間尺度 / 寿命分布 / 累積曝露モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、多変量の寿命データの解析に関して、確率分布を仮定せずに時間尺度関数をセミパラメトリックに推定する方法に注目し、その方法の精度向上、また安定した推定を行うための改善に取り組む。加えて、同じ背景を共有するが異なるモデルに累積暴露モデルがあり、それとの関係を明らかにすることを通じて、時間尺度関数の拡張を試みる。この両者の関係を論じた研究はこれまでになく、本研究の成果は新規性があるだけでなく、常時状態監視で得られるデータのモデリングと解析の際の時間尺度の取り方にも指針を与える。 これらの目的に対して、1. 時間尺度関数のセミパラメトリックな推定法の実用性の向上、2. 時間尺度関数の変数選択と関数選択の方法の開発、3. 累積曝露モデルとの関係の解明、4. 時間尺度関数への共変量の追加、5. より高次元のデータへの拡張、の課題に取り組むとの計画に基づいて、平成28年度は2.と3.と5.に取り組んだ。3.に関しては、線形時間尺度関数の尺度共変性に着目してセミパラメトリック推定法の結果の解釈を向上させ、国際会議で発表しBest Paper Awardを受賞した。2.と5.については、スパース推定の適用を検討した。そして線形近似に基づくCDAの適用を試みた。この方向の理論的な性質の検討は平成29年度の課題である。これら2と5.について平成29年度に引き続き、検討していく予定である。また4.については実際の例に基づいた検討を始めたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2.と5.について平成28年度からスパース推定の理論の適用を検討した。ただし線形モデルに対するスパース推定とは異なり、モデルが非線形となること、さらに積分を含んでいることから、尤度関数の近似を必要とする。平成28年度はまずは線形近似を用いてCDAというアルゴリズムを援用した推定アルゴリズムを提案した。まだシミュレーションに基づく成果のみであり、この成果を平成29年度に国内でまずは発表予定である。まだまだ議論が荒削りであり、引き続きこの方針で研究を進めていく。 3.の課題については周辺分布に基づく近似関係を確立したが、関係する統計的な性質を整理して、論文として投稿したい。その後に引き続き、共変量過程が定常AR過程の場合など、数理モデルに基づいて、両者の関係を解析的に検討したい。後者の平均を前者が近似する、との予想は立っている。この橋渡しができれば、時間尺度の選定に関しての見通しがよくなると考えており、これを本研究の到達目標とすることに変わりはない。 オンラインモニタリングデータを前提とした研究の重要性に気付いたため、終点のデータのみに対応する1.についての進展があまり見られていない。この点について、1.の理論を2.や3.に適用することを検討している。 以上のように、一定の成果は挙げられたことから、おおむね順調に進展している、と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の進展につれて、2.と3.が論文化の段階に近づいている。それとともに、2.と5.がスパース推定の議論に照らすと、同一の目的を持っているとみなせることもわかってきた。 1.については引き続き、正しい分布の推定関数を使うことにより指数分布を用いたときの情報量損失を評価し、また共変量とその基準時間導関数の終端のみを観測できる条件の修正の検討、さらに途中の共変量過程が得られている累積暴露モデルとの数値的な比較を続けて行く。 2.については、同推定方法における時間変数の選択、時間尺度関数の選択、そして安定した推定の実現を目指す。単純には、推定値が母数空間の端点に至ればその変数は不要となる、との基準があるが、ここにはLassoと同じくペナルティつきの当てはめによる変数のモデルからの追い出しを検討する。高次元のデータにおいても、時間尺度関数を推定してから変数選択を考えるよりは、推定プロセスが変数を選択する方が実用化しやすいためである。また5.とあわせて、スパース推定の理論の中での定式化を整理していきたい。 3.については、時間尺度関数とHong and Meeker(2014)が提案した累積暴露モデルとの関係の解析を引き続き進める。また、実際のデータを解析して進めていきたい。数理モデルに基づいた両者の関係の解析的な検討も継続する。後者の平均を前者が近似する、との予想は立っている。この橋渡しができれば、時間尺度の選定に関しての見通しがよくなると考えている。
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Research Products
(7 results)