2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K00064
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
逸見 昌之 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (80465921)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 推定関数 / 捩れを許す統計多様体 / 変形指数型分布族 / 一般化最尤推定量 |
Outline of Annual Research Achievements |
確率密度関数の集合(統計モデル)を多様体と見なし、その上で統計的推論の微分幾何学的な構造を論じることから始まった情報幾何学は、これまで情報理論や最適化、機械学習などの関連諸分野に影響を及ぼしながら発展してきたが、本研究ではこれまで行ってきた共同研究を背景としながら、情報幾何学の統計科学における役割を促進させることを目的としている。まず1つの課題は、パラメトリックな統計モデルにおける推定関数から誘導される双対微分幾何構造の統計的意味の解明である。特に推定関数がパラメータに関して可積分でない場合には、誘導される2つのアファイン接続のうち一方に捩れが生じるが、もう一方の接続に関して統計モデルが平坦であれば、情報幾何学でよく議論される双対平坦空間に類似した(測地線に関する)直交射影定理が成立し、推定関数(によって作られる推定方程式)から得られる推定量がその射影点として捉えられることが予想される。平成29年度は、この問題とその関連事項について考察を進め、得られた結果を国際会議「Geometric Science of Information」で発表し、またこの会議に付随して刊行される予定の論文集(書籍)に論文が採択された。一方、本研究では、変形指数型分布族の情報幾何(双対平坦構造)に関連する一般化最尤推定量の統計的意味の解明も別の課題として挙げているが、通常の最尤推定量の性質である一致性や漸近正規性に対応するものを考えるため、まず、その基礎となる大数の法則や中心極限定理の一般化について考察を進めた。この課題についてはまだ模索を続けている段階であるが、問題点を整理しながらこれまでに得られている結果について、統計物理学に関する国際会議「SigmaPhi2017」で、招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度(平成29年度)は昨年度(平成28年度)に引き続き、推定関数から誘導される幾何構造に関する考察を行いながら、別の課題である、変形指数型分布族の幾何構造に関連する一般化最尤法(疑似的な最尤法)の統計的意味に関する考察も行ったが、その基礎となる部分における問題(極限定理等)に難点があるため、思うようには研究は進まなかった。また、3つ目の課題として挙げていた、無限次元統計モデルに関する情報幾何の問題にはほとんど手を付けることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は最終年度となるが、本研究で掲げているどの課題もまだ完全解決には至っていないので、並行して考察を進めていく。特に、推定関数から誘導される幾何構造(捩れを許す統計多様体の構造)と変形指数型分布族の幾何構造(一般化最尤法と関連する双対平坦構造)の統計的意味の解明については、是非とも解決したい課題であるが、できる限りその真相に迫りたいと考えている。そのため、連携研究者との議論の他に、数理統計に関する国際会議で発表を行って参加者との議論も行い、また、イギリスの研究協力者や関連する研究者を訪問し議論を行うことも予定している。無限次元統計モデルの情報幾何については、申請書でも述べたように、大きな課題であり、すぐに解決できるようなものではないが、少なくとも今後の研究の糸口を探りたいと考えている。また、統計学や機械学習などの分野が交錯しながら発展を続けているデータサイエンスの分野において、情報幾何学が今後どのような役割を果たしていけるかについても、他の様々な問題との接点を探りながら考えていくつもりである。
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Causes of Carryover |
理由:次年度使用額が生じた主な理由は、初年度とその次の年度に、予定していた海外出張に行けなくて残ってしまった分を、本年度(平成29年度)に使うことができなかったことである。
使用計画:次年度(平成30年度)は、イギリスの研究協力者や関連する研究者と議論を行うことを予定しているので、まず、そのための旅費として研究費を使用する。また、国内で開催される研究集会への参加や他の関連する研究者と議論を行うための旅費や、研究に必要な物品(書籍等)の購入費用としても使用する予定である。
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Research Products
(3 results)