2016 Fiscal Year Research-status Report
変更に硬いソフトウェアに対する自己適応メカニズムを利用した可変性向上に関する研究
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15K00097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 博之 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (40508834)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己適応メカニズム / 要求工学 / ソフトウェア進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,組み込みシステムやレガシーシステムのような実装コードの変更が困難であるソフトウェアに対して,その可変性(変更容易性)を向上させる技術を確立することである.具体的には,環境の変化に応じてシステム構成を自発的に変化させる自己適応ソフトウェア(self-adaptive software)の適応メカニズムを拡張利用することで,既存コードと追加コードを効果的に共存させ,適応メカニズムにより適切に制御を切り替えることで,コードの書き換えではなく,追加と切り替えによる変更を実現する. 平成28年度は各実施計画に従って以下を実施した. テーマ1.ゴールモデルに基づいた機能拡張手法の確立:平成28年度は,自然言語で記述された要求記述をゴールモデルに変換する手法を検討し,ゴールの抽出ルールを含む変換のガイドラインを定義した.また,一部の抽出ルールを実装し,自動化の可能性について検討した. テーマ2.自己適応メカニズムに基づいた機能拡張エンジンの構築:変更を実装するための機能拡張エンジンの基盤となる,自己適応システムプログラミングフレームワークを実装し,同フレームワークを動作させるためのハードウェアについて検討した. テーマ3.既存ソフトウェア拡張実験:平成29年度に実施する機能拡張実験の検討を進めた.具体的には,ハードウェアの制御に関与するソフトウェアシステムを実験対象候補として,機能を拡張するために必要な機器構成や進化シナリオを検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テーマ1については,自然言語で記述された要求記述からゴールモデルを構築するルールとガイドラインを検討し,投稿論文にまとめるなど,一定の成果を挙げることができたと考える.ただし,機能拡張を実現するためには,ゴールモデルにおいて変更箇所(拡張ポイント)を同定する手法の検討など更なる手法の検討が必要であると考えられ,当初計画よりも少し遅れている.今年度は実証実験に向けて,テーマ1の内容を完遂させる予定である. テーマ2については,機能拡張エンジンの基盤となる自己適応システムプログラミングフレームワークの完成度を高め,組み込みシステムでの動作を確認した.この成果は,自己適応システム分野における最高峰の国際会議SASO2016(The 10th IEEE International Conference on Self-Adaptive and Self-Organizing Systems)のPosterセッションに採録されるなど,こちらも一定の成果を挙げることができた.また,同フレームワークを機能拡張エンジンとして動作させるためのハードウェアについて検討した.ただし,同定された変更箇所に対しての実装支援に関する部分については未検討であるため,これらについては今年度も引き続き検討を進める必要がある. テーマ3については,自動清掃ロボットと小型無人航空機(UAV)を対象システムとした実証実験の健闘を進めている.テーマ1とテーマ2の成果が揃った段階で,今年度の実証実験を開始する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,まずテーマ1とテーマ2の実施内容を完遂させる.テーマ1「ゴールモデルに基づいた機能拡張手法の確立」については,ゴールモデルにおいて変更箇所(拡張ポイント)を同定する手法を主に検討する.併せて,テーマ2「自己適応メカニズムに基づいた機能拡張エンジンの構築」については,現段階での研究成果である,自己適応システムプログラミングフレームワークを基盤とした機能拡張エンジンを完成させる.その後,テーマ1,2の成果を利用した,既存ソフトウェアの機能拡張実験を実施する.並行して,これらの成果をそれぞれ国内シンポジウムや国際会議へ投稿し,研究成果を発表する. もし,ゴールモデル上での拡張ポイントと機能拡張要求との関連付けが難しく,機能拡張エンジンとの親和性が低くなる場合は,自動変換の範囲を限定し,後継フェーズを効果的に遂行するためのガイドラインとしてまとめる.また,既存ソフトウェアと機能拡張エンジンとの親和性が低く,拡張が限定的である場合は,本研究で扱う機能拡張の範囲を明確に定義する.機能拡張が可能な要求の範囲や,機能拡張が可能となるソフトウェアの条件を明らかにし,拡張レベルに応じたカテゴリを定義し,各カテゴリに応じた機能拡張メカニズムを検討・提供する.
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Causes of Carryover |
研究成果発表のための旅費は概ね当初の予定通り執行したが,研究計画の一部遅れから,実験用のWebサーバ導入に至らなかったため,一部予算を繰り越すこととなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り,研究成果発表を目的とした国際会議に参加する予定である.会議としては,本テーマとの関連度の高いICSE2017(The 39th IEEE International Conference on Software Engineering),RE 2017 (The 25th IEEE International Requirements Engineering Conference ),あるいはSASO2017 (The 11th IEEE International Conference on Self-Adaptive and Self-Organizing Systems)を検討している.また,今年度導入していない実証実験用Webサーバも導入する予定である.
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Research Products
(16 results)