2016 Fiscal Year Research-status Report
継時加法混色を利用した画像へのメタデータ埋め込みに関する研究
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15K00145
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石沢 千佳子 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (00282161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚特性 / 継時加法混色 / カラーマネジメント / 情報ハイディング / 著作権・コンテンツ保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,(1)ちらつきを発生させることなく切り替え表示を行うことが可能な色の組み合わせを明らかにすることを目的とし,切り替え表示に用いる色の輝度差に着目した検討を行った。具体的には,階調値が0~255の範囲で32ずつ異なるグレースケール画像を2枚ずつ組み合わせ(36組),100Hz,120Hz,144Hzの各速度で切り替え表示を行ったときのちらつきの有無について被験者19名による目視評価を行った。また,切り替え表示に用いた画像の輝度を計測し,2枚の画像の輝度差と被験者によるちらつきの評価結果を照合した。その結果,2枚の画像の輝度差が階調値レベル毎に一定の範囲内にある場合(例えば,一方の画像の階調値が0~127のレベルであれば,2枚の画像の輝度差が約130カンデラ以内にある場合),ちらつきは発生しないことを明らかにした。また,上記検討結果を国内外の学会で発表した。さらに,上記結果と平成27年度に実施した赤・緑・青の原色同士の切り替え表示結果を比較した。その結果,液晶ディスプレイの画素を構成している赤・緑・青のサブピクセルが出力する光の輝度差(特に緑のサブピクセルが出力する光の輝度差)がちらつきの有無に関連している傾向を認めた。 加えて,(2)オリジナル画像中の色を改変するため,切り替え表示に用いる2色の選定方式について検討を加えた。具体的には,緑のサブピクセルの輝度差が一定の範囲内になるように2色のRGB値のG値を決定した後,2色の色相が異なるようにR値およびB値を決定するアルゴリズムについて検討した。 さらに,(3)切り替え表示を行っているときにカメラで撮影された画像の色と知覚された色を比較するための実験準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度はオリジナル画像中の色を文字形状に改変する方式について検討する予定であった。これに対し,切り替え表示に用いる2色を選定するアルゴリズムの検討を行ったものの,画像中の色を文字形状に改変する方式の検討を行うまでには至らなかった。このため,やや遅れていると評価する。 本研究課題は,オリジナル画像中の色を改変して作成した2枚の画像を液晶ディスプレイ上で交互に切り替え表示することでオリジナルと同等の色の画像を提示する手法の開発を目的としており,切り替え表示が閲覧者の身体に対して悪影響を与えないように2枚の画像を作成する必要がある。ちらつきを発生させることなく切り替え表示を行うための条件に関する検討は平成27年度に実施したものの,2色の輝度差がどの程度の場合にちらつきを低減可能かを明らかにするまでには至らなかった。加えて,緑の画像を用いた場合にちらつきの発生する傾向があることを認めた。そこで平成28年度は,色相を持たないグレースケール画像を用いて2色の輝度差とちらつきの関連を調査し,平成27年度に得られた結果との比較検討を行ったため,オリジナル画像の改変方式の検討がやや遅れた。 なお,グレースケール画像を用いた結果(平成28年度)とカラー画像を用いた結果(平成27年度)を比較したところ,色のRGB値におけるG値の差異(液晶ディスプレイの緑のサブピクセルが出力する光の輝度差)がちらつきの有無に関連している傾向を認めたため,この結果に基づいてオリジナル画像中の色を改変するアルゴリズムを検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成27~28年度の実施結果を踏まえ,切り替え表示に用いる2色の選定方式の有用性を検証する。加えて,オリジナル画像中の色を文字形状に改変する方式について検討する。さらに,切り替え表示を行っているときにカメラを用いて撮影された画像と知覚された画像を比較し,文字情報(メタデータ)の埋め込みによる画像保護効果を検討する。 なお,本研究で行う実験は,研究の全期間を通し「秋田大学手形地区におけるヒトを対象とした研究に関する倫理規定第6条第2項」に基づいて倫理審査の申請を行い,承認を得た研究計画の下で被験者本人の了承を得て行う。また,得られた成果は,関連学会・学協会の論文誌や国際シンポジウム,研究会などにおいて積極的に公表していく予定であり,その過程で得られた成果は速やかに以後の検討にフィードバックさせる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,研究成果の論文投稿件数が少なかったことが挙げられる。平成28年度は,平成27年度に引き続き,ちらつきを発生させることなく切り替え表示を行うための条件を明らかにすることを目的とした検討を行い,その結果を随時,国際シンポジウムや学会の研究会で発表した。しかしながら,検討途中の段階であったため,研究成果として論文誌に投稿した件数が少なく,研究成果の発表費用を次年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に生じた次年度使用額は,次年度(平成29年度)に請求する研究費と合わせて研究成果の論文投稿・掲載料として使用する計画である。
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