2016 Fiscal Year Research-status Report
音楽を取り入れた統合失調症の認知リハビリテーションプログラムの開発研究
Project/Area Number |
15K00157
|
Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
小杉 尚子 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 准教授 (80589648)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 真一 福島県立医科大学, 医学部附属病院, 博士研究員 (30110703)
児玉 直樹 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 准教授 (50383146)
清水 幸子 信州豊南短期大学, 幼児教育学科, 助教 (60575265)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 統合失調症 / 認知リハビリテーション / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究参加施設のリクルーティングを開始した。複数の精神科通所施設で施設担当者・患者本人・患者家族に対して説明会を開催し、最終的に3施設を選定した。各施設において研究参加者(プログラム参加者)をリクルートし、最終的に46名の研究参加者を得、A~Eの5グループに分けて臨床試験を行うこととした。(グループAは2016年9月~2017年1月、グループB,Cは2016年10月~2017年3月、グループD,Eは2017年1月に開始し、現在も実施中である。) 約4~6か月に渡る臨床試験を安全かつ滞りなく実施するために様々な準備を行った。具体的には、マニュアル作成(研究協力施設担当者用、プログラムを実施する音楽療法士用)、研究協力施設担当者および音楽療法士に対する勉強会の開催、リハビリテーションプログラムで使用する楽器・物品の調達・作成・搬送、30回分のプログラムの日時および研究協力施設担当者の確定、などである。またこれと並行して、プログラムの完成度を高めると共に、すでに臨床試験を開始した研究協力施設や音楽療法士からのフィードバックを収集し、設計したプログラムの改善点として知見を整理している。非常に貴重な情報を多数得た。 臨床研究の開始前および終了後に、全研究参加者に対してBACS-J(統合失調症認知機能簡易評価尺度)、BPRS(簡易精神症状評価尺度)、脳血流測定のデータ収集を行った。このうちグループA(9名)のデータを分析したところ、BPRSについて介入前後で有意な改善が見られた。下位項目の中で特に有意な改善があったのは「情動の平板化」であった。この結果を、第12回日本統合失調症学会でポスター発表した。発表内容は2017年4月20日に、Medical TribuneのWEB版に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度着手したプログラム試作を完了し、臨床試験開始に向けて、研究説明会の開催やプログラムのデモンストレーションなどを行った。その結果、複数の研究協力施設を確保し、当初目標(50名)に近い46名の研究参加者を得て臨床研究を開始することができた。最初に臨床試験が完了した研究協力施設で研究に参加した9名から得たデータを分析したところ、BPRS(簡易精神症状評価尺度)について介入前後で有意な改善が見られた。また介入終了直後に行った研究参加者へのインタビューでは、ほとんどの参加者が楽しかったと回答し、機会があったらまた参加したいと回答した参加者も複数いた。さらに、介入終了2か月後に、研究協力施設担当者に対して追跡調査を実施したところ、理想的な事例として、たとえば外部刺激によって手順の乱れが発生し、入浴に困難が発生していた研究参加者が、プログラム参加終了後は、外部刺激によって注意・集中が困難になった際には、プログラムで自身が担当演奏したリズムを口ずさむことで、注意・集中に意識を向け直し、正しい手順に戻ることができるようになった、などの報告を受けた。これらの結果は、第12回日本統合失調症学会でポスター発表し、2017年4月20日に、Medical TribuneのWEB版に掲載された。 上記の通り、プログラムを実施する研究協力施設・音楽療法士を確保し、研究参加者もほぼ計画通りに確保して、臨床試験を開始することができた。今のところ一度も事故が発生することなく、安全に臨床試験を実施・運営している。研究参加者からは楽しかったという感想を多く得ており、データ収集・分析も順調に進み、精神症状評価について効果を期待できる結果が出ている。これらのことを踏まえ、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年5月に全ての臨床試験が完了し、2017年5月および7月に、2017年3月および5月に臨床試験が完了した研究参加者に関して、介入終了2か月後の追跡調査を行う予定である。これらの臨床試験によって得たデータをまとめ、本研究で開発したプログラムの効果を評価し、2017年度中に論文にまとめる予定である。なお、7月に筑波で開催される2017年世界音楽療法大会にて、本研究の全体像および成果を、シンポジウムを主催して発表する予定である。 また、本研究で開発したプログラムは全30回のプログラムであるが、毎回プログラムが終わる毎に、各研究参加者に、プログラムの楽しさや難易度、集中しやすさなどに関するアンケートを行った。臨床試験実施中は、研究協力施設担当者および音楽療法士から、多数の貴重なフィードバックも得た。これらのアンケート結果やフィードバックに基づいて、本研究で開発したリハビリテーションプログラムそのものの評価を行う予定である。同時に、プログラムの問題点の洗い出しと改善案の検討を行い、より良いプログラムの設計に繋げていきたいと考えている。 現在、複数の精神科の病院・通所施設から本プログラムに関する問い合わせを得ている。今後は改善したプログラムを用いた、より正確な臨床試験の実施に向けて、新たな臨床試験を計画し、本研究を発展させたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
研究協力施設、音楽療法士、研究参加者への謝金および人件費の支払を、臨床試験完了後に一括して支払うこととしている。最後の臨床試験の完了が、2017年度の5月になったため、次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、当初からの研究計画(内容に関して)に基づいて、主に研究参加者、データ収集者、プログラムを実施・提供する音楽療法士などへの人件費・謝金、および臨床研究を実施するための環境構築費(高速光回線の通信費や楽器などの運搬費を含む)などに対して支出する予定である。
|
Research Products
(1 results)