2017 Fiscal Year Research-status Report
音楽を取り入れた統合失調症の認知リハビリテーションプログラムの開発研究
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15K00157
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
小杉 尚子 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (80589648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 真一 福島県立医科大学, 医学部, 名誉教授 (30110703)
児玉 直樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (50383146)
清水 幸子 信州豊南短期大学, 幼児教育学科, 講師(移行) (60575265)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 認知リハビリテーション / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2017年5月に全臨床試験を完了し、最終的に36名(男性26名、女性10名、平均年齢42.4歳)の研究参加者から、当初計画通りの臨床データを全て収集した。 主要データの分析の結果、当初の目標通り、統合失調症患者が、本研究で研究開発した「音楽を取り入れた統合失調症の認知リハビリテーションプログラム」に参加することで、認知機能障害と陰性症状の両方が改善されることを確認した。具体的には、認知機能に関しては、BACS-J(統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版)を用いて評価したところ、BACS-Jにおいて有意な改善が見られた(p=0.042)。さらにBACS-Jの下位項目では、「言語流暢性」(p=0.007)と「注意」(p=0.015)に有意な改善が見られた。陰性症状に関しては、BPRS(簡易精神症状評価尺度)において、陰性症状に関連する「情動的引きこもり」および「情動の平板化」に有意な改善が見られた(p=0.021)。さらにBPRSの下位項目では、「敵意」(p=0.044)、「幻覚による行動」(p=0.007)、「衒奇性と不自然な姿勢」(p=0.01)、「失見当識」(p=0.027)に有意な改善が見られた。 研究参加者からは、プログラムに対して「楽しかった」という感想を得た。特に楽器演奏が楽しかったという意見が多かった。また複数の研究参加者から、今後も認知機能に関する勉強やトレーニングを継続したいという感想を得た。 この研究成果は、2017年7月4~8日に筑波で開催されたThe 15th World Congress of Music Therapyにて、研究協力者および研究分担者とシンポジウムを主催して発表すると共に、2018年3月23~24日に徳島で開催された第13回日本統合失調症学会にて、ポスター発表を行った。さらに複数の論文を執筆し、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、計画していた全臨床試験を完了し、リハビリテーションプログラムを実施するために用いた全ての物品類を、臨床試験現場から撤去・回収した。臨床試験は3施設5グループで実施したが、いずれの施設でも事故は発生せず、安全な臨床試験を行うことができた。 また、リハビリテーションプログラムの実施に必要な楽器類・物品類を、3施設5グループで円滑に使い回せるように臨床試験をスケジュールし、調達する楽器類・物品類を最小限に抑えると共に、それらの保管コストを削減し、結果的に研究資金を効率的に使用することができた。 臨床試験については、最終的には36名の研究参加者を得て、所定の臨床データを全て収集した。臨床データを分析した結果、当初目標通りの結果(統合失調症患者が「音楽を取り入れた統合失調症の認知リハビリテーションプログラム」に参加することで、統合失調症の認知機能障害と陰性症状の両方を改善させる)を得ることができたため、主要な成果をまとめてThe 15th World Congress of Music Therapyおよび第13回日本統合失調症学会で発表すると共に、複数の論文を執筆した(現在投稿中)。 これらのことを踏まえ、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、本研究で得られた主要な研究成果をまとめた論文の投稿準備を進めている。その後は、本研究で得られた様々な臨床データに対して多角的な分析を行い、それらをまとめて、できるだけ多くの論文投稿を行う予定である。 今後は統合失調症患者を対象とする音楽療法士や、統合失調症患者が利用する施設などにおける、「音楽を取り入れた統合失調症の認知リハビリテーションプログラム」の実施を支援し、できるだけ多くの統合失調症患者に貢献できるように尽力したい。さらに将来的には、「音楽を取り入れた統合失調症の認知リハビリテーションプログラム」の対象疾患を広げると共に、対照群を設定した、より大規模で信頼性の高い臨床試験を行い、より多くの精神疾患患者に貢献していきたいと考えている。これらを実現するために、本研究に関連する研究会や関係者が集まる集会などにできるだけ多く参加して、本研究の内容と成果を発表することで、本研究で研究開発した認知リハビリテーションプログラムの理解者・支援者を増やしていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究の主要な研究成果をまとめた論文が、最初に投稿した学術論文誌に採録されず、別の学術論文誌に投稿するための論文修正および投稿準備を行ったため、次年度使用額が発生した。 次年度使用額は、全て、本研究の研究成果をまとめた論文の作成・投稿のために支出する予定である。
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