2016 Fiscal Year Research-status Report
モバイル端末における免疫型センサ統合手法も用いた継続的なマルチモーダル認証
Project/Area Number |
15K00188
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
渡邊 裕司 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 准教授 (60314100)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体認証 / 情報セキュリティ / 機械学習 / モバイル端末 / 免疫型システム / マルチモーダル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、モバイル端末に内蔵された複数センサ(タッチセンサや加速度センサなど)から、様々な使用状況下(タッチ操作時や歩行時など)での各ユーザの操作や行動の特徴を抽出し、継続的にマルチモーダル認証するシステムを目指す。平成28年度には、個々のモダリティに対して不明な点を解明し、マルチモーダルシステムを開発し始めた。 まず加速度に基づく歩行識別に対する27年度までの研究では、Android用の歩行記録アプリケーションを用いて平地歩行に階段昇降状況を加えた5つの歩行状況における歩行データを記録し、43個の特徴に対して被験者8名の識別を行った。しかし、どの特徴が有効であるのか調べてこなかった。そこで28年度には、被験者15名の歩行データを取得し、43個の特徴に対して新たな特徴を追加する一方で、特徴選択を行うことを試みた。特徴選択によって特に階段昇降状況において精度の向上を確認した。この結果を国際会議と信学技報にて発表した。 一方、タッチ操作に対する27年度までの研究では、自作のAndroidアプリケーションを用いて基本操作・文章閲覧・Webブラウジング時における被験者40名のタッチ操作履歴を記録し、指の移動距離や速度等の特徴に分類アルゴリズムを適用して個人を識別した。その結果、基本操作と文章閲覧において95%前後の識別率を達成した。しかし、各被験者1回の操作履歴を用いただけであった。そこで28年度には、被験者11名に対して半年間10回にわたる操作履歴を記録し、回数とともに識別率がどう変化するかを調べた。その結果、識別率の変化が実験や操作によって異なることを確認した。この成果を国内学会で発表した。 さらに、タッチセンサ、加速度センサ以外のGPSセンサ、カメラ、マイクなど他のセンサの履歴、端末自体や他のアプリケーションの使用履歴も取得するアプリケーションを開発し始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず当初の研究実施計画に記述したものの進捗がやや遅れている点として、マルチモーダルアプリケーションが未完成であり、このアプリケーションをインストールしたモバイル端末を用いて各種のセンサに対して履歴を取得する実験ができていないことが挙げられる。またタブレットに対する開発も終わっていない。これらの原因は、カメラを使った顔や指紋の認証、マイクによる音声認証、GPSによる位置に基づく認証に対して膨大な数の研究ならびに商用品があり、その選別ならびにプログラム作成に時間を要しているためである。今後は遅れている点を早急に進めていく必要がある。 また、遅れている点ではないが、現在では技報や学会発表に留まっているため、必要ならば追加でデータ解析を進めながら結果を整理して学術雑誌への投稿を早めに行うべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
まずマルチモーダルアプリケーションを早急に完成させて実験を行う。この際に全センサを常時使用して統合するのではなく、状況に応じてセンサを取捨選択する必要がある。例えばGPSやカメラなどは電池消費が激しいため常時起動しておくわけにはいかない。そこで平成29年度には、センサ統合の方法として、各センサからの認証結果をもとに「免疫型診断モデル」を用いて最終判定を行う。この診断モデルは、免疫細胞間の相互認識ネットワークから着想を得たものであり、各センサノードは他のノードと相互にテストし、そのテスト結果をもとに各ノードが自分の「信用度」を更新して正常・異常を判定する。免疫型診断モデルの適用は、免疫系の工学的応用を目指し研究を続けてきた代表者ならではの極めて独創的な視点である。 この免疫型診断モデルの比較対象として、単純な多数決モデル、決定木、ニューラルネットワークなどが挙げられる。これらの手法をそれぞれ組み込んだセンサ統合マルチモーダル認証をモバイル端末上でリアルタイムに個人認証できるように開発する。開発した各統合手法を組み込んだマルチモーダル認証を用いてリアルタイムな認証実験を行う。実験の際には、FRRやFARの精度に加えて、実用化を考慮して、処理時間や使用メモリ量などの性能比較も行う。
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