2016 Fiscal Year Research-status Report
手で使用する道具の認知と身体モデルの関係:脳内シミュレーション仮説の検証
Project/Area Number |
15K00200
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
片山 正純 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90273325)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 身体モデル / 身体表現 / 道具 / 認知 / 脳内シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
手で使用する道具の認知過程を説明する脳内シミュレーション仮説を提案した:「手で使用する道具の認知過程において,手の身体モデル(脳内表現)を用いた把持運動の脳内シミュレーションによって評価された把持可能性が関与している」.この仮説の妥当性を検証することを目的として新たな実験パラダイムを構築した.この実験パラダイムでは,手形状を幾何学的に変形して視覚提示することにより,変形した手に対応した身体モデルを再学習し,学習後に認知過程に関連した計測を行うことにより,身体モデルと認知過程の関係を調べることが可能となる. この仮説は,利き手で使用する道具の認知過程には右手の身体モデルが関与し,非利き手で使用する道具の認知過程には非利き手の身体モデルが関与することを予測する.この観点から,利き手だけで無く,非利き手の身体モデルを再学習することにより検証した.この結果,変形した利き手の身体モデルを学習した後では,利き手で使用する道具に関して,より大きなサイズをその道具と見なすように変化した.この反面,非利き手で使用する道具ではほとんど変化しなかった.また,非利き手の身体モデルを学習した後では逆の傾向を示した.これらの結果は我々の仮説の予測と一致することから,仮説の妥当性を支持している.さらに,視覚提示した手に関する身体意識(運動主体感,身体所有感)についてアンケート調査を実施した結果,全被験者で運動主体感は高い傾向を示したが,身体所有感に関しては低い被験者も存在した.そこで,身体所有感の評定値に関して2グループに分類してたところ,低いグループでは道具と見なすサイズに変化が見られなかった.この結果は,身体所有感が身体モデルの学習過程に関与していることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には平成28年度の研究目標の一部を開始し,平成28年度において上記研究実績の概要の通り研究目標を達成した.さらに,平成29年度の研究目標の一部を開始した. 平成28年度の研究目標:手の身体モデルと道具の認知過程の関係をより詳細に調べるために,利き手・非利き手と道具の種類(利き手または非利き手で使用する道具)の観点からより詳細に調べる. 以上より,本研究は当初の計画以上に進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の概要の通り平成28年度において下記研究目標の一部を開始しており,平成29年度には予定通り下記研究目標を実施する. 平成29年度の研究目標:手の身体モデルの学習と身体所有感との関係, および道具のサイズに関する認知的判断と身体所有感との関係を明らかにする.
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Causes of Carryover |
平成27年度に購入予定であった実験装置(CyberGlove)が諸般の事情により高騰したため購入することができなかったが,平成28年度の予算と合わせて購入した.このため,予定していた購入物品の一部を取りやめたことにより残額が生じた.ただし,代替え案などを工夫することにより,当初の研究計画が遂行できるように配慮した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の残額と平成29年度の予算を合わせて当初計画していた一部の装置・ソフトなどを購入する.購入に関しては研究の遂行に支障がないようにする.
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