2015 Fiscal Year Research-status Report
空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化のモデル化と応用
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15K00202
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
小島 隆次 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (00531774)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空間メンタルモデル / 空間記述 / 空間参照枠 / 視点 / 言語的経路指示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、空間関係情報を含む文章である空間記述を読解する際の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化特性に関して、(1)心理学実験による検討を行い、(2)認知モデルを構築し、(3)この認知モデルに基づき、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化を逐次自動推定するシステムを開発することである。 2015年度は、研究目的(1)に関して、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動態を検討する実験を行った。実験では、「時計屋の前」「時計屋の前を西に曲がる」「時計屋の前を西に曲がると左に市役所が見える」というように、段階的に空間情報が追加されていく形で空間記述を刺激文として提示し、各段階での実験参加者の視点取得と空間参照枠選定の特性を、刺激文に対する空間状況判定課題(視点取得と空間参照枠選定の傾向を検討する課題)と空間記憶課題を用いて検討した。実験結果から、想定していたような、全実験参加者に共通する認知特性を見出すことはできなかった。そのため、研究目的(2)に掲げた認知モデルの構築について、当初は全実験参加者共通の認知特性の存在を前提にしていたことから方針を再考する必要が生じ、現時点で実現ができていない。しかし、刺激文への課題反応特性を、刺激文中の空間情報量や空間表現を軸として分析することで、空間メンタルモデルに対する視点取得と空間参照枠選定の傾向を特定のカテゴリに分類可能であることが実験データからわかっており、認知モデル構築の前提と方針を変更することで、認知モデル構築作業を完了できる目処はついているので、大きな問題はない。 また、当初の計画では2016年度に実施する予定であった、webサーベイによる空間記述文の収集調査を2015年度に先行して数回実施し、およそ500名分の空間記述データを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた方針による認知モデルの構築については、実験結果が想定通りにはならなかったため、予定通りに2015年度内に完了できなかったが、実験データに基づいてモデル構築の方針を転換することで、研究の最終目的である、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化を逐次自動推定するシステムの開発に対しては支障がなく、また、2016年度に予定していたwebサーベイを先行して一部実施できたことから、全体の進捗としては概ね順調に進んでいると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、まず2015年度に収集した実験データの分析を継続して行い、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化の特性に関する認知モデルの構築を行うとともに、多様な空間記述をwebサーベイで収集する。そして、構築した認知モデルの妥当性・信頼性の評価と改良を、収集した多様な空間記述文を刺激とした心理学実験(2015年度に実施した実験と同様の実験)を通じて行う予定である。2017年度には、それまでの二年間の研究成果を基にして、空間記述読解時の空間メンタルモデルに対する視点と空間参照枠の動的変化を逐次自動推定するシステムの開発と評価を実施する。
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Causes of Carryover |
実験と調査にかかる謝金が、想定していたよりも少額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に実施する実験と調査への謝金に充当する予定である。
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