2015 Fiscal Year Research-status Report
共感の個人差を形成する文化・心理・生物学的要因に関する認知科学的研究
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15K00205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60399011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共感 / 認知的共感 / 情動的共感 / セロトニン神経系遺伝子多型 / オキシトシン受容体遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な研究実績として以下の二点が挙げられる。1. 共感と援助行動に関わる新たな認知心理学的モデルの構築に,工夫に富んだ課題と多彩な指標により貢献している点。2.近赤外分光法という神経科学的技法により、行動実験のみでは捉えられない共感の過程を視覚化するとともに、その個人差を遺伝子の多様性と関連づけ、明らかにした方法論上の新規性。 具体的な成果としては、1) 共感の感情的側面のセロトニン2A受容体遺伝子多型,および関わる心理特性が脳の前頭前野外側部を介し,他者への援助行動へと影響すること、また、2) 共感の認知的側面として,他者の視点を理解する過程を支える前頭前野外側部の関与を明らかにし,一方ではそうした過程は不快感情により阻害され,オキシトシン受容体遺伝子多型により調整されうることなどを見出した。これはオキシトシンという環境への感受性の高いホルモンが,脳を介して認知的共感に関与すること見出した点で,共感を形成する遺伝と環境との関わり解明する上での意義をもつ。また、3)認知的負荷により乳児の泣き声に対する養育意図の減少、ネガティブな行動意図の増加、そうした変化がは共感によって媒介・調整されることを示した。 これとは別の研究課題として、4) 共感に関わる遺伝子発現を修飾する環境入力のマーカーとしての遺伝子メチル化の解析系の大枠を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のような複数の実験の結果をまとめるとともに、次年度以降の解析系を確立したことから、研究課題の初年度の成果としては以上のように評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
海外の研究者と連携し、国外のデータを収集するとともに、認知・感情的共感の両者の促進にかかわる技法の開発、個人差の心理・生理学的機構の解明、および遺伝子のメチル化解析を随時推進する。
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Causes of Carryover |
遺伝子メチル化の解析系がほぼ確立したが、一部未完了であり、そのために解析の実施環境が未整備であったことから、使用予定であった試薬等消耗品、付属機器類等の予算を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の解析系を確立し、解析に要する付属機器類、消耗品等の購入に宛て、研究推進の基盤とする。
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[Journal Article] Involvement of serotonin transporter gene polymorphisms (5-HTT) in impulsive behavior in the Japanese population.2016
Author(s)
Nomura, M., Kaneko, M., Okuma, Y., Nomura, J., Kusumi, I., Koyama, T., Nomura, Y.
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Journal Title
PLoS One,
Volume: 10
Pages: .
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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