2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K00211
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
八木 善彦 立正大学, 心理学部, 准教授 (80375485)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単純接触効果 / 広告 / 好意度評定 |
Outline of Annual Research Achievements |
同じ対象をただ繰り返し見るだけで,その対象は後に好意的に評価されるようになる(単純接触効果)。この現象は,広告等産業界からも多くの注目を集める一方で,例えば広告の呈示回数を増加させても商品の売上は向上しないという,基礎研究とのギャップも指摘されてきた。近年の基礎研究からの示唆によれば(Yagi et al. 2009, J Exp Psychol Hum Learn),こうした問題の原因の一つは,刺激の反復接触時に形成される心的表象と好意度評定時に呈示される刺激の類似性の低さにあると考えられる。そこで本研究では,接触時に形成される刺激の表象と好意度評定時に呈示される刺激の類似性が単純接触効果に与える影響について検討し,単純接触効果の応用的成果の実現を可能とする基盤的知見の収集を目指した。 2年目の代表的成果は,一般的な広告画像において単純接触効果が生じる構成要素を特定した点にある。刺激として,女性モデルと商品から構成され,水平方向中心から女性モデル部分と商品部分に2分割可能な広告画像を複数枚用意した。広告画像は,日本人参加者における事前の接触経験を統制するため,日本を除くアジア地域で実際に流通したものを選定した。実験は全て,接触と好意度評定の2段階から構成された。接触段階において,参加者は広告画像全体をランダムな順序で8回反復呈示された。参加者の課題はこれらの刺激をただ観察することであった。好意度評定段階では,広告全体(実験1),女性モデル部分のみ(実験2),または商品部分のみ(実験3)を呈示し,好ましさの程度を評定するよう求めた。各実験の好意度評定段階において,半数は接触段階で呈示された刺激,半数はこの段階で初めて呈示される刺激であった。実験の結果,接触経験による好意度評定値の増加は,実験1および実験2においてのみ認められ,実験3においては消失することが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では,本年度までに大きく二つのテーマについて検討を完了させる予定であった。一方は本年度行った「広告刺激における単純接触効果」であり,もう一方は,「接触時と好意度評定時の音刺激の有無が単純接触効果に与える影響」を検討するものであった。後者のテーマについては,現在も検討を行っている最中であるため,当初計画に比べて若干の遅れが認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
「接触時と好意度評定時の音刺激の有無が単純接触効果に与える影響」については,引き続き検討を行う。また,本年度,行動指標を用いて一定の成果が認められた「広告刺激における単純接触効果」については,眼球運動の測定など他の指標を用いた複合的な検討を行う予定である。さらには,先行研究の示唆に基づき(Yagi et al. 2009, J Exp Psychol Hum Learn),観察者の注意や構えを操作することにより,実在する広告刺激においても商品に対する好意的評価の増加が生起する条件の特定を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末に投稿論文のための英文校閲を依頼しており,請求等の支払手続きが年度内に完了していないため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度末に支払いが完了していない,英文校閲費の他,成果発表のための費用(論文掲載費,学会発表費)を執行する予定である。また,研究期間中のデータを整理と報告書作成のため,データおよび資料の整理を担当する補助員を雇用するとともに,補助員が使用する作業用ノートPCを購入する予定である。
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