2015 Fiscal Year Research-status Report
能動的な安全学習と安全作業のためのスマート化学実験環境に関する研究
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15K00265
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
藤波 香織 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10409633)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウェアラブルデバイス / 拡張現実感 / 記憶補助 / 機械学習 / プロジェクタ / 視認性 |
Outline of Annual Research Achievements |
下記の3項目を実施した. 1)実験器具の把持直前や操作中に手先に情報を提示することによる危険回避と安全学習のための道具作りとして,様々な前腕の状態で視認可能な前腕上の場所判定機能を開発した.腕輪状デバイスの周上に10個のLEDと12個の3軸加速度センサを配置した装置を開発し,様々な前腕の状態での重力加速度値と視認状況の関係を機械学習によりモデル化した.132次元の特徴量を用いた場合にはF値が0.87となったが,計算量と冗長さを削減するために特徴量選択を行い19次元の特徴量で0.80の精度を得た.加速度センサ数削減のために貢献度が低い特徴量を除外し,加速度センサ8個で12個と同等の精度を達成した.
2)卓上への情報投映に際し,卓上物への情報の重なりによる視認性劣化の影響を最小限に抑えるための情報投映位置決定手法(Visibility-aware Gradient Descent法)を開発した.様々なラベル配置状態を定量化する特徴量を定義し,その配置状態に対応した主観的な視認性の関係を機械学習によりモデル化した.その結果,BayesNetで10個の特徴量を用いることで視認性が高い場所をF値0.66の精度で判定することが可能となった.
3)卓上作業状況を記録した動画から作業状況を振り返ることで安全学習が可能であると考え,振り返りを促進する静止画の判定方法を検討した.化学実験場面に適用する前段階として,評価を行いやすい「談笑」などの集団活動を対象とし,盛り上がりと興味状態を検出する手法を開発した.盛り上がりからは音量と笑い声,興味からは注視を特徴として定義し,機械学習による「切り出し適切度」の推定手法を開発した.評価の結果,状況の伝わりやすさを考慮した場面決定,ブレやアングル・構図を考慮した特徴量,状況に応じた判定結果の重みづけ,の必要性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,中等教育から高等教育前期程度の学習者による実験作業時の危険回避能力を強化することを目的としたスマート実験室を対象としている.特に,既存の環境に容易にフィットし実験作業時の制約を考慮したシステム構築技法の確立を目指している.上記の研究実績はこれを満たしている.実績項目1について装置の開発にやや時間を要したものの,概ね年度当初の計画に沿って目的達成に向かっていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
1)前年度作製した腕輪型情報提示装置を改良し判定精度を向上させる.そのために,装着時のセンサの位置が変わりにくい回路構成と新たな特徴量を検討する.また,点(LED)から面(超小型OLEDディスプレイ)に対応させ文字や記号の「読みやすさ」を考慮する. 2)卓上投映時の視認性を考慮した投影法に関しては,前年度定義した特徴量に加えて,投映面の色や作業者から見たときの死角の影響を考慮した特徴量を加えることでさらなる精度向上を目指す.また深度センサを用いて物体形状情報を取得することで,情報提示が必要なモノ以外にはマーカー貼付を不要とするための手法開発を行う. 3)作業状況を振り返りのための画像切り出し手法については,前年度に課題とした状況の伝わりやすさの考慮,ブレやアングル・構図の考慮,状況に応じた判定結果の重みづけ手法を開発する. 4)教科書や指導者の頭の中で定性的に表現されているリスクとその発生要因の関係をモデル化する方法を検討する.被害状況と被害をもたらした実験器具や物質に着目して分析し,機械学習による自動分類の可能性を検証する. 5)作業後の情報提示による学習可能性を明らかにするために,予め設定された注意点を含む作業を行った後で,それに関連する問いかけをシステムが発し,一定時間経過後に種明かしをする形式を考え,学習効果を評価する.
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Causes of Carryover |
前年度には国際会議と論文誌での成果発表を予定し,その分の経費を計上していたが,適切な場がなかったためこれらを見送った.腕輪型デバイスを初期の試作として内製したこと,および動作検証用PCは既存のものを使用していたため,支出がなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は前年度見送った国際会議と論文誌投稿に関して,それぞれ2件ずつを予定している.これに加えて,国内会議5件を予定しており,これらの出張費・参加費・英文校正費ならびに投稿費を計上する.さらに,腕輪型デバイスは外部に試作機の製造を委託する予定であり,そこで経費が生じる.さらに,本年度実施する計画では計算量が増加することが予想されるため,動作検証用PCを購入する.
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Research Products
(4 results)