2015 Fiscal Year Research-status Report
音楽ライブのインターネット中継における一体感の付与
Project/Area Number |
15K00274
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
垂水 浩幸 香川大学, 工学部, 教授 (80293900)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | CSCW / ヒューマンインタフェース / インターネット中継 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ロック・ポップス等の軽音楽のインターネットライブ中継を対象とし、遠隔視聴者と演奏者の間での非言語コミュニケーションについての支援方法を探求する。音楽の生演奏の現場では、観客は手を振るなどの身振りで演奏者に対して反応することによって双方向コミュニケーションが成立しているが、インターネット中継ではそれができない。ネットワーク遅延が存在する前提でこの問題を解決するための工夫を行い、遠隔視聴者と演奏者との間での一体感を提供することが目的である。 このため、遠隔視聴者が音楽鑑賞中に身振りを入力し、それを違和感なく演奏者に伝えるシステムを構築する。演奏者に伝える方法は、アニメーション表示とする。遅延による違和感を緩和するため、音楽と身振りの時間的ずれを修正する工夫を行う。具体的には、演奏の拍と身振りを強制的な同期を実現する仕組みを作り、試作評価を行った。ドラムに振動センサを装着し、検出した振動を音楽の拍とみなして身振りのアニメーション表示を同期させた。その試作品について、大学の軽音楽部に評価を依頼した。試作品が動作すること、及び演奏上の支障がないことが確認された。またアニメーションが同期をとることについては賛同する評価が得られた。 一方で、入力方法についても検討した。キーボード、マウスによる入力の他、スマートフォンの加速度センサによる身振り入力を開発した。音楽ライブで多用される3種類の身振りをスマートフォンで入力できるようにし、これら3種類の入力方法を比較評価する実験を行った。その結果、ライブに参加している印象を与えやすいのはスマートフォン、ライブ映像に集中しやすいのはキーボードとの結果が得られた。またスマートフォンの重量による疲労や身振り検出精度に課題があることも判明した。 成果については一部を口頭発表した。うち一件は、情報処理学会第78回全国大会で学生奨励賞を受賞した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画では、アニメーションと演奏を強制的に同期するシステムの試作と試験運用を行い、演奏者側からの評価を中心にシステムの妥当性を検討することとなっていた。この点については実現している。さらに、入力デバイスにスマートフォンを導入したことについては、当初の計画になかったが実現した。この点では達成度が計画より優っている。一方で、成果のまとめが年度末になったため、論文化については一部未発表となっている。具体的には最終的な評価結果については論文発表が次年度にまたぐことになった。この点については少し遅れている。 以上のプラス・マイナスを総合して、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当初計画によれば遠隔視聴者側の評価を実施することになっている。特にライブで重視される「一体感」についての考察・研究を行い、具体的な評価軸を定めて視聴者側に本研究で試作するシステムについて評価をしてもらう。これに加え、個別の視聴者の識別を演奏者に提示する方法、また演奏者から遠隔視聴者へのコミュニケーションフィードバックの方法についても検討する予定となっている。 これに加え、当初計画にはないが、演奏者に提示するアニメーションの改善、遠隔視聴者の身振り入力方法の改善も行う予定である。 平成29年度は、当初計画の通り、プロ演奏者やその観客層を対象とした評価活動を実施する予定である。 これらの研究活動を通じて、音楽演奏者と遠隔視聴者との間の非言語コミュニケーションの支援方法に道筋をつけるとともに、演奏者と観客の間の非言語コミュニケーションの本質についての考察を深める。
|
Causes of Carryover |
平成27年度は研究設備として、超短焦点プロジェクタと大型液晶ディスプレイの購入を検討していたが、超短焦点プロジェクタを予定していたより高価格の RICOH PJ WX4141NI を導入することにより、当面は十分実験が可能であると判断した。このため、大型液晶ディスプレイ(研究計画時予定見積り価格 530千円)については今後の実験で必要が生じた場面(例えばプロの演奏現場での設置)に必要に応じて購入することとして、初年度は購入を保留した。以上が、次年度使用額が生じた主要な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算は、次年度以降の実験環境に応じた設備導入、または評価実験の充実(ライブ施設利用費の拡大、被験者謝金の拡大)等に利用し、研究の質を高めるために有効に活用することを考えている。
|
Research Products
(4 results)