2016 Fiscal Year Research-status Report
拡張ローレンツ方程式に基づくカオス暗号およびカオス認証に関する研究
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15K00353
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮野 尚哉 立命館大学, 理工学部, 教授 (10312480)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カオス / 暗号 / 認証 / 暗号鍵交換 / カオス同期 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、立命館大学理工学部の長憲一朗助教および修士課程学生2名とともに研究を推進し、平成28年度において以下の研究成果を得た。 1.異なる係数行列で特定される拡張Lorenz振動子間の間歇的結合による信号交換に基づいて、送信者から受信者に暗号鍵を安全に配送するためのアルゴリズムを開発した。 2.このアルゴリズムをソフトウェア化して遠隔地にある2台のコンピュータ上に実装し、暗号鍵配送実験を行った。4秒程度で120ビット長の暗号鍵交換が実行されることを確認した。120ビット長の暗号鍵は2の120乗の規模の暗号鍵空間を構成する。これは、総当たり攻撃に対する安全性を担保する暗号鍵空間の規模である。この暗号鍵交換手法は、量子鍵配送の代替手段となり得る。 3.拡張Lorenz振動子が生成するカオス列を疑似乱数に変換するための特別なアルゴリズムを開発した。生成した疑似乱数について、NIST SP 800-22に開示されている疑似乱数評価プロトコルを用いてその安全性を統計検定した結果、15種類すべての統計検定に合格することが明らかとなった。(前年度においては一部の評価プロトコルに合格できなかった。) 4.1秒当たり10の9乗ギガビットを達成目標として、疑似乱数の高速生成を可能とするために拡張Lorenz方程式の写像モデル化を行った。 5.上記研究成果について、国際学会における英語発表を3件行った。査読付き英文論文誌については、2件が投稿中、1件が査読結果を受けて改訂中、また、更に2件が投稿予定である。国際学会では暗号分野の専門家との情報交換を進め、今後の共同研究の可能性を確保した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張Lorenz方程式によって生成される疑似乱数の安全性評価が完了し、その安全性がNIST SP 800-22を基準として確認されたことは、本手法の暗号システムとしての実用性が担保された。今後の最大の課題は、暗号鍵交換を量子鍵配送によって実行できることを実証実験によって確認することであるが、量子鍵配送を実行できる共同研究機関は未決定である。ただし、量子鍵配送の代替手段として、異なる拡張Lorenz振動子間の間歇結合によるカオス部分同期に基づく鍵配送プロトコルを開発し、ソフトウェア化と実証実験を行ったことは重要な研究成果であった。 これらの理由により、本研究課題は概ね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本課題の最終年度であり、国際学会を通して獲得した情報交換先からのアドバイスを踏まえて、本手法の有用性を検証するための総合的実証実験を行うことが今年度の課題である。本手法は、従来の暗号システムにはない、新しいものであり、暗号分野の他研究機関による評価が非常に重要である。従って、他研究機関への情報発信を活発に行うことに注力する。
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