2017 Fiscal Year Research-status Report
アオリ光学系を用いた車載用周囲監視システムのための距離推定
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15K00365
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
池岡 宏 福山大学, 工学部, 講師 (20579966)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 距離推定 / コンピュータビジョン / 3次元復元 / ニューラルネットワーク / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにアオリ光学系を用いた距離推定方式について,車載用途で利用しやすいシステムとして確立することを目的とし,研究を進めてきた.中でもメインとなる研究対象は,距離推定範囲の広範囲化である.ただし,広範囲化によって対象となる個々の物体の画像解像度の低下や光学系に起因する画像歪によって,どうしても鮮鋭度の推定誤差が大きくなる.したがって,広範囲化と高精度化は同時に対応する必要がある.そこで,まずは1枚の地面合焦画像より距離を推定する手法について,コントラストの影響を低減した手法を開発し,これは国際会議Image Electronics and Visual Computing Workshop (IEVC) 2016で発表した.この成果は,距離推定の頑健化・高精度化に大きく寄与するものである.続いて取り組んだのは,ニューラルネットワークの利用により推定誤差の低減を図ることである.一般に,車両全周囲にわたって距離を監視する際,撮影装置の配置台数を抑制するため,また各装置間の連携を図りやすくするために,広角レンズの仕様が要望される.しかし,広角レンズにおいては収差が発生しやすく,特にレンズ外周で発生した収差は光学理論(近軸理論)との乖離が大きく,ぼけモデルに従った距離推定アルゴリズムでは精度の悪化が生じていた.よって,これを人工知能技術として注目を集めているニューラルネットワークを活用することで対応した.この成果は,国際会議International Workshop on Advanced Image Technology(IWAIT)2018で発表し,Best Paper Awardを受賞するなど非常に高い評価を得た.以上のように,主に広範囲化またそれに伴って必要となる高精度化に力を注ぎ,成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
距離推定精度の向上と距離推定範囲の拡大を意図した方式改善を検討するにあたって,いくつかの新たな知見が得られ,その確認・検討に研究リソースを割いたことが予定よりやや遅れた原因である.精度向上については,単判イメージセンサでの距離推定能力の可能性について検討を行った.その際,エッジ抽出方式にこれまで用いていた単純なラプラシアンベースの鮮鋭度算出に変えて,コントラスト変化の影響を受けにくいLocal Contrast Prior(LCP)による鮮鋭度算出法を採用することで,距離推定精度の向上を図ることに成功した.推定範囲拡大については,2枚のイメージセンサから算出するぼけ比がレンズ収差の影響を受けて,画像外周部における距離推定精度が劣化する問題があった.そこで,これに対処するため,光学理論(近軸理論)およびそのぼけモデルに従った距離推定過程を改め,ニューラルネットワークとディープラーニングを用いることで,レンズ収差の影響を吸収する仕組みを導入した.実際,その試みは成功し従来の光学理論に従うより,距離推定精度が大きく向上した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり,本撮影装置を単開口・二板で組み上げると分光の仕組みも必要なこともあり,通常の単開口・単板方式のカメラに比較し,装置サイズが大型化する.加えて,車両全周囲にわたって距離を監視するシステムの実現となると,本撮影装置が複数台必要となることから,高コスト化だけでなく,多くキャリブレーションが必要となることも懸念材料となる.そこで,これまでの2枚のアオリ画像のぼけ比から距離を推定するという基本的なアルゴリズムはそのままに,レンズの色収差やカラーフィルタによる絞りを活用するという光学系の工夫により,2枚以上のぼけ方の異なるアオリ画像を取得することで,距離推定を実現することを思いついた.これにより,これまでに積み上げた理論やノウハウはそのままに,ハードウェアの変更だけで車載用途で利用しやすい距離推定システムを実現できる可能性がある.これは,先に挙げた装置の簡素化およびコストの低減,キャリブレーションの簡素化など,より多くの問題を解決することが期待される.今後は,単開口・単板による距離推定の実用性について検討を行い,車両全周にわたって配置しやすいシステムを開発する.
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Causes of Carryover |
新たな方式改善案を考案したことで,その理論的考察および検討に時間を割いたことから,実証実験での支出が少なくなり,そこに差額が生じた.今後は、これまでの研究成果をまとめ上げるとともに、実験による検証を実施することで,各消耗品の購入等に助成金を用いる予定である.加えてそれらの成果を学会等で発表する際にも助成金を利用する予定である.
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