2016 Fiscal Year Research-status Report
障害に応じた協調的認知行動ナビゲーションと振り返りに基づく認知リハビリテーション
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15K00368
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐野 睦夫 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30351464)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知リハビリテーション / 行動認識 / 対話ロボット / 行動ナビゲーション / 振り返り支援 / 身体リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
1.振り返りによる気づき・やる気の想起手法:振り返りの脳内モデルとして,追体験によるミラーニューロンに基づく気づきの発現システム,および報酬系に基づくやる気の想起システムを追求し,リカバリー行為をしたときは,報酬系に働きかけ,失敗したときは,教師映像と体験映像を見ながら,その理由を発見するように働きかけるシステム構成法を明らかにした(研究会1件).本提案を検証するために,複数の高次脳機能障害者に対し,自室の掃除の習慣化を目指し,振り返り支援システムに基づく認知リハビリを実施した.その結果,自身の障害への理解と工夫が観察され,遂行機能評価尺度の値が向上し,提案手法の有効性が確認された(研究会1件). 2.生活行動認知・身体的インタラクションとリハビリ支援:VR空間内で実空間を拡張した生活空間の中で,片づけ行動に基づく身体的インタラクション方式を提案し,遂行機能評価を行った(大会発表予定).現在,VR模倣運動に基づくリハビリ支援システムを構築中であり,片麻痺患者に対する評価実験を行う予定である. 3.生活行動認識・認知行動理解方式の改良も進めた.一人称視点映像に対しては,深層学習を用いた器具認識情報と腕の軌跡に着目した調理動作認識手法を開発し,手先動作に対して97%の認識率を得た(研究会4件).三人称視点の骨格情報に対して,動作・行動認識のモデル化を行い,CNNとHMMの統合モデルにより,連続的な掃除動作に対して95%,掃除行動に対しては100%の認識率を達成した(研究会2件,大会1件).遂行機能理解評価として,仮想空間でのリアルタイム評価方式を提案し(大会1件),注意機能理解方式としては,従来の注意モデルに特異注意の概念を導入し,認知機能と配分的注意の因果関係を明らかにした(国際会議1件,研究会2件,大会1件).記憶機能理解方式としては,置忘れのモデル化を行った(研究会1件).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体験映像と教師映像・認知機能評価履歴・障害理解履歴に基づき,生活行動に対する認知リハビリを振り返ることにより,振り返りによる気づき・やる気の想起させるモデルを提案し振り返り支援システムに実装し,複数の高次脳機能障害者に対するリハビリ実験を行い,提案システムの有効性を確認できた.得られた障害者のリハビリデータから,気づきややる気を想起させるためのコミュニケーション生成における必要条件を明らかにし,コミュニケーションロボットへの実装を行い,振り返り支援システムへの導入の可能性を示した.以上より,振り返りによる気づき・やる気の想起手法について,研究はおおむね順調に進展している. 生活行動認知・身体的インタラクションとリハビリ支援の取り組みについては,「身体性システム」(新学術領域)のグループと議論を行い,連携を行うこととした.当初予定をしていたリーティングなどの簡単な生活動作を,遂行機能を伴い,実践的なリハビリができる片づけ行動に変更し,基盤となるVR片づけトレーニングシステムを構築した.筋電フィードバックについては,学内の筋電計測を専門とする研究者と連携することになり,29年後半から,片麻痺患者に対する評価実験ができる目途がついている.従って,身体の障害がない患者に対しての実験を28年に行う計画を見直し,29年度に実施することにした.以上,効果的な研究連携により,今後,実りの多い成果が期待される. 27年度から進めてきた生活行動認識の改良については,調理行動や掃除行動に対して十分な認識率を達成でき,協調的な認知行動ナビゲーションの性能を向上させることが可能となった.さらに,認知行動評価・理解方式の改良については,当初予定していた遂行・注意・記憶機能の評価および理解方式に展開することができ,おおむね順調に進展している. 以上の取り組みにより,計画はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,前半に,認知障害および身体障害を有する患者の障害のレベルに応じた協調的認知行動ナビゲーション支援システムおよび振り返り支援システムの改良を進める.後半から認知障害を伴う片麻痺患者2名に対するリハビリ実験を進める.同時に,生活復帰をしたときに効果的な掃除・片づけリハビリに重点化し,身体障害を伴わない認知障害者3名に対して,認知リハビリ実験を行う.当初,在宅実験も予定していたが,掃除や片づけをする上での危険性を考慮し,大阪府立障がい者自立センターの小山氏らに協力頂き,実験協力者を募り,自立支援プログラムの一環として実施する.システム構築・プログラム作成・実験実施のため,従来の大井氏,三原氏に,大北氏,兒島氏,梁氏を新しく研究協力者を加え強化を図る.生活環境の知能化に関して,ミュンヘン工科大学Bock教授のグループに研究協力者として引き続き助言を頂く.本研究で最も重要な認知機能評価・理解システムの高度化・実験データの体系化の観点から,引き続き,慶應義塾大学医学部の三村教授,田渕講師,斎藤助教,文学部梅田教授に研究協力者として協力頂く.そのため,4回程度のヒアリングのための出張経費を研究協力者である大井氏を含めて計上したい.身体性システムグループの東北大学出江教授,NIIの稲邑准教授とも3回程度の議論を行うため,研究協力者(院生)を含めて出張経費を賄いたい.筋電フィードバックについては,新たに,本学井上准教授に研究協力者として協力を頂く.実験は,10月から1月までの4か月とし,延べ5人に対して,毎週実施し,出張経費を賄いたい.ナビゲーション・振り返り実験については実験場所に持ち運びのできる高性能PCを購入したい.他,センサ部品類,国際会議2件程度(海外),英文添削等,国内研究会・大会4件程度を本研究費で充てたい.
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Causes of Carryover |
平成28年度は,「振り返りによる気づき・やる気の想起手法」に関する研究成果を国際会議で発表予定であったが,大学の業務が入り行けなくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,「振り返りによる気づき・やる気の想起手法」に関する成果を,海外(ヨーロッパ等)で発表予定であり,平成29年度計画に組み入れたい.
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Research Products
(18 results)