2017 Fiscal Year Research-status Report
過去の神経活動がスパイク生成に与える影響から神経系の情報キャリアを探る
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15K00391
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山野辺 貴信 北海道大学, 医学研究院, 助教 (00322800)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漸近展開 / ジャンプ拡散過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は、拡散過程で近似されるイオンチャネルノイズ、シナプス小胞の自発的放出によるジャンプノイズなどを持つ確率的な挙動をする素子である。各神経細胞の過渡応答特性とノイズの影響を反映した出力関数を実験的に求めることが、情報キャリアを解明するために必要であると考えられる。実験で神経細胞の出力関数を調べる方法を構築するため、ジャンプ拡散過程で記述されるノイズを持つ確率的神経細胞モデルの統計的大域挙動を調べている。本年度は、特にジャンプ拡散過程項を持つ確率的非線形振動子における、漸近展開の数学的基礎について研究した。以下の2点の証明により、我々は確率過程の漸近展開の適用範囲を拡げることができた。これにより確率微分方程式で記述される多くの確率的神経細胞モデルに漸近展開理論を適用できるようになると思われる。 1.通常、確率微分方程式の一意解の存在を示すため、リプシッツ条件、線形増大条件が用いられる。しかし、我々が用いた確率的非線形振動子モデルおよび多くの神経細胞モデルにおいて、これらの条件を満たさない場合がある。そこで、我々は今回用いた確率的神経振動子が一意解を持つ十分条件を調べ、それを明らかにした。これは他の確率的神経細胞モデルにおいても広く成り立つことが期待される条件となっている。 2.一意解が存在しても与えられた確率微分方程式の推移確率密度が退化してしまえば、推移確率密度の漸近展開を計算することはできない。我々は、最新の確率解析の結果を用い、確率的神経振動子が非退化性を満たすパラメータの範囲を明らかにした。 さらに、上記の解析に基づき、神経細胞の膜電位データを用い、どのような解析法が適切なのか検討した。これまでの研究で膜電位データでも過去の神経活動に依存するような応答が見られることが分かっているが、それを定量化する方法も検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ジャンプ拡散過程項を持つ確率微分方程式により記述される確率的非線形振動子で、その推移確率密度の漸近展開の数学的基礎を示す必要が生じた。我々が知る限りでは、この結果は確率過程の漸近展開理論の適用範囲を拡げる成果であり、神経細胞のような非線形性を持つ確率的なシステムでも、我々が示した十分条件を満たせば、確率過程の漸近展開理論を適用できることを示したことになる。現在は解決したが、この課題を遂行中予想外の事情が発生し、研究に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
予想外の事情のため研究に遅延が生じ、補助事業延長申請し、承認された。これまで行ってきた研究により、理論的には解決積みの課題もいくつかある。これらの研究成果を論文で発表するのを優先させる予定である。また、今年度は特に実験データの解析に重点を置き研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
補助事業期間延長申請書に記載された理由により研究に遅れが生じたため。確率的神経細胞モデルの解析に必要な計算機利用料、実験動物、試薬、論文投稿料などに充てる予定である。
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