2018 Fiscal Year Annual Research Report
Design of chronotheraputic strategy against tumorgenesis based on modeling of cell cycle interacting with circadian clock
Project/Area Number |
15K00394
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中尾 光之 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (20172265)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胆汁酸 / 腸肝循環 / 末梢時計 / 摂食リズム位相反転 / 核内受容体CAR |
Outline of Annual Research Achievements |
疫学的にも実験的にも生物時計機構が障害されるとガンの発生率や進行が有意に高まることが報告されている。本研究では、細胞内概日時計の支配を受けるガン細胞の増殖オートマトンモデルを構築して、一般的なガン化あるいは増殖のメカニズムをシミュレーションしてきた。ここではさらに、概日リズムの乱れによって肝組織内で産生される胆汁酸(BA)濃度の異常から肝ガンへの移行メカニズムに対象を絞り、概日リズム制御下にある胆汁酸のリサイクル、産生の制御機構をモデル化し、リズムの乱れとガン化の因果関係を明らかにした。腸肝循環におけるBAの濃度は視交叉上核(SCN)および末梢の概日時計機構からの制御を受けるフィードバック機構によりが維持されている。本研究では、BA制御機構を概日時計からの影響を考慮した分子レベルでモデル化した。また、摂食リズム位相反転(RF)状態とBA吸着剤摂取(BAS)状態のシミュレーションを行い、モデルの妥当性を検証した。さらに、RF下での肝臓内BAの一過性上昇現象を再現すると共に、そのメカニズムについて推論した。すなわち、位相反転した摂食リズムへ末梢時計が位相前進しながら再同調する場合にのみ特異的な上昇が生起することを示し、その分子的メカニズムを明らかにした。そのメカニズムを縮約モデルでも再現し、その妥当性を確認した。BAは栄養素の消化促進やシグナル因子としての役割を持つ一方で、核内受容体CARの活性化を介して肝細胞に障害を与える。これに対して、安定なフィードバックシステムが概日時計の変調を受けることによって、制御系はBAの生産/取込みと排出に一定の位相差を与えることで必要な時間にのみBAを増加させていると考えられる。モデルは、この時間的秩序が変化することでBAの異常な濃度上昇が起こる可能性を示した。これと先に構築した細胞周期モデルを組み合わせて肝がんの増殖をシミュレーションする。
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