2016 Fiscal Year Research-status Report
物語構造分析に基づく専門文書の統合的読解技術の向上に関する研究
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15K00454
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
内山 清子 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (20458970)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物語構造分析 / 機能 / Genre Analysis |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、物語構造分析手法の基礎理論を調査し、専門文書に適応できる部分との切り分けを行うことを目標にした。まず、物語構造分析では、登場人物を中心にすえて文や各登場人物間の「役割・機能」を分析するなどの手法があり、その手法を論文以外の文書で実施し、文書全体に必須の要素として何が必要かを分析した。物語の場合は「行動」、「イベント」、「感情」の三つの機能にそれぞれ詳細な要素を分類することができた。 この手法を専門文書に適用すると「行動」が研究やレポートにおける「実験した」「分析した」などの具体的な動詞で表現され、「イベント」は専門用語で表現される手法や理論、「感情」は著者の意図を反映した叙述表現と考えられる。 そこで、まず論文やレポートにおける「はじめに」の部分について分析を行った。分析では、「はじめに」の文章の一文が何を示すのかを英語論文のGenre AnalysisやScience Research Writingを参考にして分類した。各文の役割として「目的」「背景」「既存の手法」「問題点」「オリジナリティ」などに分けることができ、それぞれの文において使用される言語表現を分析した。その結果、「目的」や「背景」では、機能として「行動」に該当する論文やレポートであれば一般的に用いられる表現が多く用いられ、「既存の手法」「問題点」「オリジナリティ」では「イベント」に相当する専門用語や特定分野において用いられる表現などが含まれることがわかった。著者の意図を反映した「感情」表現はどの箇所にも出現する可能性があるが、形容動詞、助動詞、複合辞で表現されているため、識別が他の表現よりも容易であった。 これらの結果から、それぞれの特徴的表現をリスト化し、文書数を増やしてその出現の分布や傾向を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物語構造分析を直接論文やレポートに適用することを考えていたが、物語構造分析の性質上、難しいことがわかり、まずは物語になっているものから着手することとした。その中で、恋愛漫画が物語として要素が比較的はっきりとわかってくるのではないかということから、恋愛漫画を対象として分析を行った。これまでにも漫画を物語構造分析の手法で分析している事例はあったが、実際に着手してみると、これまでの理論をさらに整理することができた。またその分析結果から、論文やレポートなどのフォーマルな文書への適応の可能性も発見することができた。 当初の計画にはなかったが、一見関係がないと思われていたことを実施することで、実は関連付けをすることができたことで、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29 年度は、最終年度となるためこれまでの研究成果を総括していく。特に28年度にまとめた専門文書における「はじめに」の章にある、特徴的な言語表現を類型化することと、物語における「イベント」の機能を果たす専門用語について整理し、フォーマルな文書を一つの物語と考えて、どのような流れが理解を深めることができるのかなどを検討していく。 具体的には、「はじめに」の章における、文の役割や、特徴的言語表現の機能を詳細に分類し、類型化していく。また、情報の提示の順番として、どの形式が最も有効であるのかについても分析を行っていく。 専門文書の読解において、文書の文章・論理構造の把握と専門用語の機能に着目しながら事前知識の不足を補っていく方法と、事前に分野知識を図式化したものを例示するだけの方法によって、内容を理解する読解実験を行う。事前知識がなくても、言語的特徴や論理展開を予測しながら内容を理解できることを実証する。さらに、専門分野知識を専門用語の定義文だけを与えて内容を理解させる方法と図式化した分野知識を与える方法による理解度の違いなども実験できればと考えている。最終的には、言語的手がかりと、専門分野の知識の両方を使ったモデルを用いて統合的な読解技術による効率的な内容理解について研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度末(2017年3月末)に国際会議の学会発表において旅費を支出したが、会計的には今年度として計上するため、その差が生じてしまった。また、国内学会で開かれる国際会議にも参加予定だったが、参加できなかったため、その分が残高となっている。従ってそれ以外はほぼ予定通りの支出になっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、研究成果の発表として、国内発表を3回以上、海外発表を2回を予定しているため、ほぼその予算に使用することと、レポートや論文データをまとめるために人手が必要なためにその謝金や、データ入力やまとめを行う作業および最終実験のためのPC購入に当てる予定である。
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Research Products
(2 results)