2016 Fiscal Year Research-status Report
「沈黙の螺旋」=「閾値」モデルにおける全体状況の認知過程に関する研究
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15K00463
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
古賀 豊 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90282962)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | インターネット・コミュニケーション / 「沈黙の螺旋」理論 / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3年計画の2年目にあたるが,実施した主要な研究内容として,次の2点をあげておく。 まず,1年目に検討したデータ取得およびテキスト・マイニング手法(topic-model)を用いて,インターネット・コミュニケーションのオンライン・データを対象にした分析を行った。その成果のひとつが論文「音楽をめぐる言説の現在:ディスク・レビューの内容分析」であるが,ここでは,音楽関連出版社WEBサイトのディスク・レビューとオンライン・ショッピング・サイトでのユーザによるディスク・レビュー(ユーザ・レビュー)を対象に,両者の共通点,相違点の検出,および,それらを生み出す要因の検討を行った。この研究で得られたもっとも重要な知見は,それぞれの言説が生成・流通する場・システムによって,人々の言説の認知過程,および,それに基づく言説生成に大きな違いが生じることである。 次に実施したのは,「全体状況の認知」過程を比較検討することを目的とした既存大規模調査データを利用した二次分析である。その成果が論文「現代の社会意識:オープンデータ活用による数量的分析の試み」であるが,ここでは,1990年代からほぼ20年間にわたって継続的にユニークな設問内容の定点調査を行っている大規模データを利用し,「多重対応分析」,「順序ロジスティック回帰(比例オッズモデル)」,「対数線形モデル(残差分析)」といった手法を用いて分析を行った。その結果,得られた知見は,人々が社会の状況を認知する際に,対象の社会状況の広がり(範囲)の想定が,その認知内容に大きな違いを与えており,その効果は,他の要因,例えば,時代や性別・年齢などの回答者のデモグラフィックな要因よりも,遥かに大きいことである。 以上,研究内容のうち主要なものをあげたが,そのほか,コンピュータ情報処理・機械学習分野で開発されてきた最新の各種分析手法応用の準備作業を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度には,前述の通り,2つの成果を実現しており,おおむね順調に進捗しているものと判断している。 ただし,前年度同様,本務校での仕事の激化により,本研究課題を遂行する時間が十分にとれなくなる恐れがあることが,今後の懸念材料である。
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Strategy for Future Research Activity |
オンライン・コミュニケーションの参加者の行動を把握するためには,各コミュニケーション間の参照関係や発信時刻の密度などのメタ・データ的な情報の検討が有用である。これは前年度の「今後の研究の推進方策」でも書いた点であるが,まだ不十分であるため,今年度,まず,この点に重点をおいて研究を進める予定である。 さらに,これまでと同様に,各種学会,研究会などに積極的に参加し,最新研究動向の把握に努めるとともに,2017年度は最終年度にあたるため,研究の集大成として,論文などの成果発表を積極的に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に使用可能期間が実質5ヶ月しかなかったことから,当初予定額からの残額が生じ,今年度も,その分が引き継がれたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が生じたことにより,予算面で余裕ができることから,各種学会,研究会,イベント視察への参加や,成果発表を積極的に行っていく予定である。
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