2017 Fiscal Year Annual Research Report
A research on media practice for social inclusion in local community
Project/Area Number |
15K00464
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小川 明子 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (00351156)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 祐子 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (80458942)
伊藤 昌亮 成蹊大学, 文学部, 教授 (80548769)
坂田 邦子 東北大学, 情報科学研究科, 講師 (90376608)
松浦 さと子 龍谷大学, 政策学部, 教授 (60319788)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 社会的包摂 / 社会的排除 / コミュニティ・メディア / メディア表象 / 参加型メディア / 社会的弱者 / メディア実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究において明らかになったのは主に以下の3点である。 まず、メディアにおける包摂/排除プロセスにおけるジレンマである。マス・メディアにおいては、意図せざる形で周縁化された人びとをめぐる表象の歪曲や欠落が起こりうる一方、ジャーナリズムをはじめとして、社会的弱者を擁護し、様々な不利益を告発する役割も果たしてきた。しかしこうした弱者擁護の姿勢が、時にサイレントマジョリティの抱える困難に対する関心の欠如と認識され、逆にマス・メディア批判の根拠となったり、新たに排除を生み出してしまう現状がある。こうした状況から見えてくるのは、メディア・コミュニケーションにおいて、誰が、誰を包摂するのかという問題であり、突き詰めれば、包摂がその外部や内部に不可避的に排除を生み出してしまう論理的ジレンマである。そのジレンマを回避するためには、まず、包摂の主体と対象とを明らかにしつつ、その限界を意識するとともに、多様なメディアによる重層的な包摂が求められるだろう。 2点目に、地域メディアの中に、想像を超える数やアイディアによる包摂型番組が存在していたことであり、またパーソナリティや、番組審議会など局のありように助言する組織の人選においても、比較的多様な人選がなされており、それが地域の番組制作に生かされていたことである。局の大きさや方針による差は大きいものの、社会福祉協議会などとの連携で、社会的弱者との共存を望む番組が各局で模索されている地域メディアの現状は、マス・メディアとは異なる存在意義を提起している。 3点目に、マス・メディア、インターネットに、実にユニークな包摂型コンテンツが多数存在していたことである。刑務所や精神病院といったアサイラムから当事者が一般社会に向けて放送するもの、高齢者や患者が社会へ変革を訴えるものなど、多様なメディア実践の存在が明らかになるとともに、その可能性や課題も浮き彫りとなった。
|
Remarks |
(1)Towards Inclusive Mediaは、分断状態にある排除問題について、メディア表現の視点から解説したエッセイと事例集をベースにし、研究成果を一般向けに提示したサイト。実践事例へのリンクも含まれる。(2)は科研費の報告書。(3)(4)は実践成果をまとめたサイト(3)では愛知・名古屋戦争に関する資料館とピースあいちでの実践が本研究と関連する。
|