2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K00478
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
田中 健次 茨城大学, 教育学部, 教授 (10274565)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デジタルコンテンツ / 日本伝統音楽 / 教材化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は先行研究(挑戦的萌芽研究平成25.26年度「課題番号25540148:日本伝統音楽学習のためのデジタルコンテンツ開発」)で得た知見と方法論を用いて、伝統音楽学習のためのデジタル教材開発を拡大・進化させ、音楽科教育に寄与しようとするものである。 周知のように音楽科教育において伝統音楽学習が義務付けられ、その実施については教育現場では「箏」を中心とした実技演習が定着しつつある。しかし音楽教師の伝統音楽全般に対する理解という点ではいまだ充分であるとはいえず、その理解に意欲をもっても教師が参考にする図書類そのものが専門的な内容で難解であること、加えて図書は二次元情報であるため、伝統音楽で用いられる具体的な演奏や楽器の詳細な情報、さらにはそれら伝統音楽が成立するまでの歴史的・社会的・文化的な周辺情報についての理解に限界があるのも事実である。 本研究はこのような音楽科教育における伝統音楽理解を促進するため、「伝統音楽の全体理解」と伝統音楽を構成する各分野、すなわち「雅楽」「声明」「能楽」「琵琶楽」「尺八楽」「歌舞伎」「浄瑠璃」をわかりやすく理解するための三次元情報を加えたデジタルコンテンツの開発とその教材化を目指すものである。 その開発にあたっては、萌芽研究で得たコンテンツ作成の手順と教材化の方法を応用しながら、やはり萌芽研究のアンケート調査でえた「音楽教師が必要とするコンテンツ内容」、すなわち「音楽史」「音楽特性」「使用楽器」「奏法解説」「実演」「海外文化からの影響」「受容層」「現代」というキーワードをもとに作成をするものである。 平成27年度においては、「雅楽」と「声明」を新たに研究対象とするとともに、萌芽研究の継続として「箏」と「三味線」の楽器類を対象とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、日本伝統音楽の各分野において「雅楽」「声明」「民謡」「三味線(長唄)」「箏(地歌)」の各分野を、「音楽史」「音楽特性」「使用楽器」「奏法解説」「実演」「海外文化からの影響」「受容層」「現代」の項目からコンテンツを開発した。「三味線」及び「箏」に関するデジタルコンテンツは、本研究に先だつ研究(補助事業期間平成25-26年課題番号25540148)にてその開発を終えていたため、修正作業となり本年度においては主に「雅楽」「声明」「民謡」を対象にした開発となった。 デジタルコンテンツの開発とその教材化にあたっては著作権法に抵触しない画像(静止画・動画)の収集と作成が必要となり、本研究に協力を得た演奏家よりそれらの提供を受けた。 「雅楽」「声明」のデジタルコンテンツ開発に必要な「海外文化からの影響」に関する情報とコンテンツ提供については、中国浙江音楽大学の協力をえて当該年度中に実施する予定であったが、中国側研究者との日程が調整できず実施することができなかった。したがって平成28年度に繰り越すこととなった。なお本研究について本年度10月8-11日にバンコクで開催された国際会議「Study Group of Traditional Music in Asia Pacific」より招聘をうけて「Re-thinking authenticity of folklore from lokal perspectives」というタイトルのもとに、伝統音楽のデジタル化による教材の有効性について発表を行った。本年度中に作成予定であった「声明」についてはコンテンツ開発は終了したが、外注すべき「映像編集」と「オーサリング」が期間内でできず、平成28年度に発注することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「浄瑠璃」「歌舞伎」「民謡」「全体概要」についての資料収集とデジタルコンテンツの開発を実施する。あわせて平成27年度に作成したデジタルデータと教材を音楽教育の場に提供し、小中学校の先生方にモニタリングを行い、データと教材の微調整と修正を行う。また成果発表について検討し、音楽教育関係者にこれらデータの存在を告知する。 また、本研究会で作成したデジタルコンテンツを基にして、教師が自身でそれらコンテンツをカスタマイズできすようになるための研究会を研究協力小学校を会場にして実施し、音楽教育に内在する日本伝統音楽の指導に関する苦手意識を下げるとともに、日本伝統音楽学習におけるICT活用の利便性の理解を得る。 なお、平成28年度に予定していた韓国での資料収集については、まずは中国での資料収集を行い、韓国については平成29度で実施するものとする。 なお本研究計画にあるように、作成したデジタルコンテンツの英語化についても並行して実施する。
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Causes of Carryover |
平成27年度にコンテンツ開発をした「声明」は、デジタル教材化する作業を年度内で外注する予定であった。しかし大学の第二期計画決算の関係上、平成28年1月の発注ができなくなりなり、平成28年度に繰り越すこととした。そのため平成27年度支出予定額が低くなった。 また平成27年度に実施した楽器演奏の撮影に伴う人件費・謝金について、演奏家の方々が学校教育における伝統音楽普及のためになるならばと固辞してくださり、予定した人件費・謝金を若干であるが支出する必要がなくなった。加えて平成27年度に予定していた中国における調査研究についても、中国側研究者の理由による急な予定変更で実施できなかった。そのため旅費(海外)を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度にコンテンツ開発をした「声明」の外注作業については、平成28年度4月に発注し、支出する。平成27年度で支出予定であった、演奏等の撮影にかかわる人件費・謝金については、平成28年度におけるデジタルコンテンツ制作に必要な国内調査旅費に用いる。 平成27年度に予定していた中国における調査研究を平成28年度で実施するため、その旅費として支出する。
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