2015 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸の超簡易誘導体化法の開発:脂肪酸安定同位体比を用いた環境動態の理解へ向けて
Project/Area Number |
15K00519
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 晶子 金沢大学, 自然システム学系, 博士研究員 (00422791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂肪酸 / エステル誘導体化 / 安定同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
エタノール/クロロギ酸エチル(ECF)での手法を、メタノール/クロロギ酸メチル(MCF)、1-プロパノール/クロロギ酸プロピル(PCF)、2-プロパノール/PCFの各組み合わせに適用して、エステル化の可否、回収率を検討した。室温下、反応時間5分を必須条件として実験を進め、いずれの組み合わせにおいても誘導体化物が得られることを確認した。回収率は、メタノール<エタノール<プロパノールの順で高くなる傾向がみられる。このことは、エタノール以外の低級アルコールでも本研究で目指す安全・短時間で誰でもが簡単にできる手法が達成できることを示しており、手法の高い汎用性、利便性につながる成果である。 また、エタノール/ECFの手法において意図的に水を加えることで、この手法での水分の混入に対する安定性を検討した。エタノールの量に対して一定量の水を加え、いずれのエタノール/ECF/水の系でもエステル誘導体化が進むことを確認した。水の添加割合がエタノール量の10%程度の時には水を加えない場合とほぼ同等の回収率が得られている。水の混入が厳禁と考えられてきた反応系で、水の混入が許容できるようになることは、試薬の取り扱いや湿度コントロールにかかる労力の縮小、反応の安定性を意味し、より信頼性の高い手法の確立につながる成果である。 高回収率での誘導体化が可能になれば必要となる試料量を相対的に少なくでき、取扱いが容易に、また、コスト面に対する改善につながると考えられる。現在までの結果では2-プロパノール/PCFの組み合わせで最も高い回収率が得られる一方、試薬の沸点により現在の方法ではエステル化後の完全な試薬除去に困難を要することが分かった。この点の改良も含め本誘導体化のプロトコルの作成を進めて、今後実試料への応用を図っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脂肪酸の標準試薬を使用して手法検討の実験を進め、試薬の沸点などの観点から、メタノール、エタノール、プロパノールを本手法に適する試薬として限定し、必須条件とした室温、反応時間5分の条件下で各試薬におけるエステル化の可否、回収率の結果を得た。 また、水の混入に関する実験では、水が添加された条件下でもエステル化反応が進んだことから、本手法がある程度の水分の混入も厭わない非常に利便性の高い手法であることが確認できた。 安定同位体比質量分析装置の最適化と必要試料量の見積りにやや時間がかかったため、安定同位体比データがまだ十分に得られていない状況ではあるが、既に装置の基本的な確認などは終えて試料の測定を開始している。測定装置側から見積もった最低必要量に基づいて誘導体化の実験を進めており、今後は回収率と合わせて更なるスケールダウンを図りつつ、各実験条件下での安定同位体比データを獲得する段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、標準試薬による実験での安定同位体比データの獲得を進め、試薬レベルでの本手法についての評価を早急におこなっていく予定である。また、本手法を土壌、植物、動物の試料に展開することでそれぞれ異なるタイプの実試料での有用性を評価しながら、個々の問題点に応じた手法の改良を進めていく計画である。これまでの実験で生じたプロパノールを使用した際の試薬除去の問題にも対処していく。
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Causes of Carryover |
当初の予定より安定同位体比質量分析装置の条件設定と最適化に時間がかかったため、脂肪酸の標準試薬での実験を十分に進めることができなかった。このため、本年度予定をしていた簡便性確認のための実験依頼や学会発表、論文作成などの予定が遅れており、人件費・謝金、旅費、その他の経費に差異が生じた。また、やや実験が遅れていることに加えて、試薬やガラス器具など既存のものが使用できる場合には新規の購入を控えたため、物品費においてはその本年度使用経費が少なくなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
標準試薬での実験の遅れを取り戻し、研究成果を国内外の学会で発表するとともに論文化する予定であり、次年度に予定している実試料での実験・研究成果の公表に加えて、これらに関わる経費が必要となる。さらに、当初の予定よりも次年度の実験や分析が増加することが想定され、それらにともなう消耗品などの経費などが必要となることから、生じている次年度使用額をこれらに充てていく計画である。
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