2016 Fiscal Year Research-status Report
福島県沖生物中の微弱放射性銀/セシウム比精密定量法開発と移行過程解明への応用
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15K00520
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
浜島 靖典 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (60172970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 道夫 福島大学, 環境放射能研究所, 特任教授 (80343896)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 極微弱放射線測定 / 放射性銀 / 放射性セシウム / 海生生物 / 井戸型HPGe / 計数効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰサム効果を持つ放射性元素の精密定量法の開発 9核種混合放射能標準ガンマ体積線源を用い,0から2MeVのエネルギー範囲で,測定に使用するHPGeの計数効率を再測定した。9核種の中で,典型的なサム効果の認められる標準核種のピーク効率を測定し,計数効率との関係から全効率曲線をエネルギーの関数として求めた。全効率曲線がエネルギーの関数として求まると,サム効果のある複雑な壊変様式を持つ全ての核種のガンマ線の計数効率が推定可能となる。本研究目的のサム効果のある放射性銀のピーク効率を推定した。一方,放射性銀の放射能実測のため,標準放射性銀の体積線源を購入し,そのピーク効率を求めた。昨年度の測定では,線源の放射能強度が強く,偶然の同時計数の可能性があったが,全効率曲線及びピーク効率曲線から推定した放射性銀の計数効率と放射性銀の体積線源から求めた実測値はほぼ一致した。本法による計数効率推定方法は,充分実用的であることが確認された。今後,標準放射性銀の体積線源の減衰を待って精度の検討を行う。 Ⅱ由来と生態系への移行・蓄積の原因の解明 昨年度は,海生生物試料を採取し前処理後,極微弱放射線測定を行った。放射性セシウムはどの試料からも検出された。また一部の生物試料から極微弱放射性銀を検出した。本年度は放射性銀の移行解明のため,主に海水・懸濁物・海底土中の放射性銀の放射能測定を行った。海底土の有機物分画部分から,昨年度は極微弱放射性銀を観測したが,海水,及び,海底土の無機物分画部分からは放射性銀は検出されなかった。本年度は,放射性銀はいずれの試料からも検出されなかった。放射性銀の半減期は250日と短く,これまで必ず検出されていた半減期約2年の放射性セシウム134さえも検出が困難な状況になっている。このため,試料の選択と,前処理法,濃縮法の検討が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅰサム効果を持つ放射性元素の精密定量法の開発 購入済のアイソトープ協会製の9核種混合放射能標準ガンマ体積線源を用い,測定に使用する井戸型HPGeの計数効率を再測定した。サム効果のある比較的簡単な壊変様式を持つ複数個の核種のガンマ線のみかけの計数効率を測定し,そのピーク効率から,全効率曲線をエネルギーの関数として求めた。実験値との比較のためのため,ドイツ製の放射性銀の体積標準線源を購入し,その効率を精密に求めた。全効率曲線及びピーク効率曲線から推定した放射性銀の計数効率と放射性銀の体積線源から求めた実測値はほぼ一致した。昨年度は,放射性銀線源の放射能強度が強く,偶然の同時計数の可能性があると判明したため,精度確認のため,減衰を待って再測定を行う。 Ⅱ由来と生態系への移行・蓄積の原因の解明 海生生物試料を採取し前処理後,金沢大学尾小屋地下実験室で極微弱放射線測定を行った。本年度も放射性セシウムはどの試料からも検出された。海生生物への放射性銀の移行解明のため,本年度は主に,海水・懸濁物・海底土等の試料を採取し,前処理後,同様に極微弱放射線測定を行った。海水,及び,海底土の無機物分画部分からは本年度も放射性銀は検出されなかった。海底土の有機物分画部分から昨年度は,極微弱放射性銀を観測したが,本年度は検出されなかった。放射性銀の半減期は250日と半減期約2年の放射性セシウム134よりかなり短く,尾小屋地下実験施設の検出器でも検出が困難な状況になっている。このため,試料の選択と試料量,前処理法,濃縮法の検討が必要となる。放射性銀の化学形,存在状態も再検討し,前処理・濃縮手順の変更を検討する必要がある。 以上から平成28年度の計画は,Ⅰはほぼ計画通り進展,Ⅱは放射性銀の減衰のため効率的な濃縮処理手順に一部変更し検出を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰサム効果を持つ放射性元素の精密定量法の開発 ほぼ計画通り終了しているが,精度確認のため放射性銀の減衰を待ってサム効果の補正係数の再測定を行う。 Ⅱ由来と生態系への移行・蓄積の原因の解明 海生生物への放射性銀の由来解明のため,主に,海水・海底土を化学処理し,放射性物質の検出を試みたが,本年度も無機物分画部分からは現時点では放射性銀は検出されなかった。無機物分画部分にはなぜ放射性銀が検出されないのかの検討に重点をおく。特に,放射性銀の存在形態,化学形が複数存在し,海水・海底土に対して行った化学処理が不十分なため検出できない可能性を考慮し,有機分画部分も含め,前処理手順の改定を検討する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Reference material for natural radionuclides in glass designed for underground experiments2016
Author(s)
Pavel P. Povinec, Mai K. Pham Jose Busto, Cedric Cerna, Detlev Degering, Yasunori Hamajima, Karol Holy, Mikael Hult, Miroslav Jeskovsky, Matthias Kohler, Andrej Kovacik, Matthias Laubenstein, Pia Loaiza, Fadahat Mamedov, James Mott, Monika Mullerova, Frederique Perrot, Fabrice Piquemal, Jean-Louis Reyss, et. al.
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Journal Title
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry
Volume: 307
Pages: 619-626
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] 134Cs and 137Cs in the North Pacific Ocean derived from the March 2011 TEPCO Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident, Japan. Part two: estimation of 134Cs and 137Cs inventories in the North Pacific Ocean2016
Author(s)
M. Aoyama, M. Kajino, T. Y. Tanaka, T. T. Sekiyama, D. Tsumune, T. Tsubono, Y. Hamajima, Y. Inomata, T. Gamo,
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 72
Pages: 67-76
DOI
Peer Reviewed
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