2017 Fiscal Year Research-status Report
東シベリア森林域の大気境界層気候学-植物フェノロジーと広域大気場の相互作用
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15K00521
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小谷 亜由美 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80447242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 岳史 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20152142)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大気植生相互作用 / 大気境界層 / 地表面熱収支 / 凍土季節融解 / フェノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,東シベリアのカラマツ林における植物フェノロジーと永久凍土表層の凍結融解の季節進行にともなう地表面熱収支と大気境界層の変化について,地上観測データ,大気プロファイルデータおよび気象再解析データを用いた解析を行う.平成29年度にはこれらのデータ解析を中心に進めた.また4月に地上観測サイトにて,融雪・開葉前の森林群落での群落調査と積雪計測を行った. ヤクーツクの地上観測にもとづく地表面熱収支の過去15年間の変化として,とくに顕熱/潜熱の比率(ボーエン比)の季節変化に特徴があり,2000年代半ばの土壌の湿潤年には,秋季に減少する潜熱が以前よりも維持されるようになった.一方で春から夏季前半にかけての潜熱の増加は湿潤年に早期化傾向があった.カラマツの開葉時期や森林による二酸化炭素吸収の開始時期の変化は主に気温に伴うとみられ,熱収支の年変動とは同調しなかった.この湿潤年を境に森林凍土の表層融解は早期化した.以上のように土壌湿潤の影響は,凍土の季節融解と植物活動(蒸散)の変動を介して,地表面熱収支に現れることが分かった. このとき大気境界層では夏季後半の可降水量が大きく,湿潤年夏季に大気境界層の発達が抑えられたが,その後には増加し湿潤年以前と同程度となった.これは地上観測サイトでの土壌水分や融解層深度が近年も湿潤年以前の程度には戻らないことと対照的である.また,この大気境界データの傾向はヤクーツクだけでなく周辺の測定地点でもみられ,水平100㎞スケールの下層大気との対応が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なるデータセットからの得られた結果の総合解析が進んでいるものの,当初計画では29年度を最終年度として計画していた成果発表の実施は達成できなかった.このため補助事業期間の延長を申請した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した異なるタイプのデータ解析結果,現地で得られた凍土および植生調査の結果を総合して,対象地域における植物フェノロジーと凍土季節融解が地表面熱収支を介して大気境界層におよぼす影響を明らかにする.
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた海外学会での成果発表が実施できなかったため.次年度に成果発表のための経費として利用する計画である.
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Active-layer thickness at permafrost larch forests in eastern Siberia.2018
Author(s)
Kotani, A., Nakatsubo, M., Ohta, T., Hiyama, T., Iijima,Y., Maximov, T.C.
Organizer
Fifth International Symposium on Arctic Research (ISAR-5)
Int'l Joint Research
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