2016 Fiscal Year Research-status Report
降水量変動が植生の揮発性炭化水素放出に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
15K00523
|
Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
奥村 智憲 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食の安全研究部及び水, その他部局等, 技師 (20649636)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 緑子 京都大学, 農学研究科, 教授 (90293919)
山本 勝彦 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食の安全研究部及び水, その他部局等, 再雇用 (70574101)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 揮発性炭化水素 / 森林植生 / 土壌水分 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、降水に伴う土壌水分環境の変化が日本の主要な森林植生の非メタン炭化水素(Non Methane Hydrocarbons、NMHC)放出に与える影響を明らかにし、観測により得られた結果をもとにした、関西における大気中オゾン二次生成に森林植生由来非メタン炭化水素がどの程度寄与しているのかを大気化学輸送モデルを用いたシミュレーションにより推定する。オゾン(対流圏オゾン)の前駆物質である非メタン炭化水素は間接的にオゾンによる稲の減収や人への健康影響に関与している。我が国では人為起源の非メタン炭化水素やNOxの排出規制が進んだにもかかわらず、未だほぼ全ての測定局で光化学オキシダント濃度が環境基準値を超えており、森林植生由来の非メタン炭化水素による関与が考えられている。 本年度は、代表者の所属機関の移転に伴う中断を挟み、①室内実験による日本の主要な森林構成樹種の非メタン炭化水素放出量と土壌水分量の関係を明らかにするとともに、②関西の森林において成木を対象とした測定を開始した。また③シミュレーションによるオゾン二次生成への影響を推定するために森林由来非メタン炭化水素インベントリ作成に必要な最新の関西の植生データを三次メッシュレベルに加工した。 ①は報告例が非常に少なく、土壌環境と植生の葉の非メタン炭化水素生成活性の関係を明らかにする試みであり、②については①の苗木で確認された土壌水分量と葉からの非メタン炭化水素放出量の関係を実際の森林で成木を対象とし確認するものである。また③は松枯れやなら枯れなどの近年の植生改変を反映し解像度としても従来の3次メッシュから高精度化されたポリゴンデータをもとにすることでインベントリの精度向上が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の移転による実験機材と分析機器の移転作業に伴う約3ヶ月間の中断のため、年度当初の目標はやや達成することができなかった。また全体を通しても本課題が追加採択のため初年度の研究着手が遅れた影響でやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、室内実験にて今年度に測定できなかった森林樹種を対象にした計測とフィールド調査を実施した後に、得られた観測データと今年度に加工した植生データを用いて関西の植生由来非メタン炭化水素インベントリを作成し、大気化学シミュレーションを実施する。なお非メタン炭化水素の分析については、当初に予定していた陽子移動反応質量分析計のレンタルは予算不足のために中止し、代表者の所属機関で今年度に導入した加熱脱着装置付の質量分析計にて代用することとした。
|
Causes of Carryover |
所属機関の移転による中断と追加採択であったために初年度の研究着手が遅れたことで全体の進捗がやや遅れているため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に室内実験およびフィールド調査に必要な消耗品の購入として使用する。
|