2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞骨格接着分子プレクチンの放射線誘発DNA損傷応答における新規機能の解明
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15K00546
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
松井 理 金沢医科大学, 医学部, 助教 (60288272)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プレクチン / DNA損傷応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
全てのPlectin分子種の発現を抑制した細胞では、放射線照射後のp21の発現誘導が強く抑制されることから、このp21の発現誘導にどのPlectin分子種が関わっているか調べた。前年度、GenBankに登録されている全8種類のPlectinのtranscript variantについて、動物細胞発現ベクターを構築し、siRNAでPlectinの発現を抑制した細胞にこれらを導入し、放射線照射後のp21発現誘導への関与を調べ、isoform 1b、1cが関与することを報告した。さらに解析を進めた結果、新たに代表的なPlectin分子種であるisoform 1も同様に放射線照射後のp21発現誘導に関与することを明らかにした。 次に、放射線照射後のp21の発現誘導において、Plectinがシグナル経路のどの段階に関与するのか調べた。Plectinの発現を抑制した細胞について解析を行った結果、放射線照射後に誘導されるp53の発現量が大幅に低下することを見出した。このことから、Plectinが放射線照射後のp53の蛋白量の制御に関与していることが強く示唆された。そこで、p53を直接リン酸化し、ユビキチン化の阻害、蛋白質の安定化に関与するATM、Chk2について調べたところ、Plectinの発現抑制によりChk2の蛋白量が激減することを見出した。このことから、Plectin発現抑制細胞において、Chk2の蛋白量が減少したことにより、放射線照射後のp53の蛋白量の増加が抑制され、その結果、p21の発現誘導が抑制されたことが示唆された。PlectinがChk2の蛋白量を制御していることは、siRNAでPlectinの発現を抑制し、Chk2の蛋白量が低下した細胞に、前述のPlectin isoform 1、1c発現ベクターを導入することにより、Chk2の蛋白量が回復することから確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の研究計画であった各Plectin分子種の発現ベクターの構築に大きな遅延が生じたことから、研究計画が大幅に遅れている。また、p53の活性化におけるPlectinの役割について、当初はp53の転写機能の制御(質的変化)に関与していると予想していたが、解析を進めた結果、p53の蛋白量の制御(量的変化)に関与していることが明らかになった。そのため、研究計画に大きな変更が生じたことも研究が遅れた一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射後のp21の発現制御において、Plectinの作用点がChk2の発現制御にあることが判明したので、今後はPlectinによるChk2の発現量の制御が、転写レベルでの制御によるものなのか、それとも翻訳後の蛋白質の安定性の制御によるものなのかを中心に検証する。
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Causes of Carryover |
研究計画の大幅な遅れと変更により、次年度に研究計画が延長されたことにともない、研究費の確保が必要となったため。次年度に繰り越された研究費は研究計画のさらなる遂行に使用する。
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