2015 Fiscal Year Research-status Report
福島復興へ向けた放射能汚染地区の木材内部の放射能汚染分布の計測調査に関する研究
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15K00552
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
高田 真志 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 教授 (50291109)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福島原発事故 / 放射能汚染 / 樹木 / イメージングプレート / エックス線 / 半導体検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故により放射能汚染した樹木内部の放射能汚染状況を,樹木の状態に近く水分を含んだ状態の非乾燥スギとひのき,コナラを用いて,計測した.樹木含有放射性物質は原発事故由来のセシウム134とセシウム137,自然放射線起源のカリウム40とトリウム系列とウラン系列の放射性物質であり,放射性セシウム以外の放射性核種も樹木内部の放射能汚染検査では考慮する必要があることが分かった.樹木内部への放射能拡散を非乾燥木材を用いてイメージングプレートで計測した結果,木材の辺材と芯材の放射能汚染が樹種により異なるという結果が得られた.常緑樹は芯材が辺材よりも,落葉樹は辺材が芯材よりも放射能汚染密度が高いことが分かった.簡易計測による汚染密度は0.01-0.16 Bq/cm2であり,放射線取扱施設からの物品持ち出し検査基準の40 Bq/cm2を十分に下回っていた.樹皮の放射能汚染は樹木内部よりも高い傾向を示した. 次に伐採前に放射能汚染検査する手法を検討した.森林内のガンマ線環境下における微弱な樹木内の放射能をCdTe半導体検出器で計測するものである.CdTe半導体検出器のガンマ線に対する応答特性を測定した.実木材の計測を試みたが,自然放射線による計数のために微弱な放射能の計測が困難であった.さらに鉛遮へい体による自然放射線計数の低減を試みたが,鉛から放出された蛍光エックス線が放射性セシウムのエックス線計測を妨害しており,現状ではCdTe半導体検出器を用いた微弱な放射性セシウムからのエックス線計測が困難であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
樹木状態に近い非脱水木材中の放射能汚染分布をイメージングプレートを用いて計測できることが分かった.落葉樹と常緑樹の樹種の違いにより辺材と芯材に汚染状況の傾向が違うことが分かった.樹木内部の自然放射線起因の放射線と森林内のガンマ線を,事故由来の放射性セシウムから区別して計測するために,エックス線を計測する手法を試みた.しかしCdTe半導体検出器の自然放射線に対する感度を無視できず,また鉛遮へい体による自然放射線の低減は鉛から放出される蛍光エックス線が放射性セシウムからのエックス線計測の妨害になっており,現状では樹木内部の微弱な放射能を検出することは困難となった.エックス線からベータ線を計測する手法に切り替えて行うため,まだ森林内での放射能計測の実現性が確立していない.
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Strategy for Future Research Activity |
現在行なっているCdTe半導体検出器を用いたエックス線計測では森林内での放射能計測が困難であることが分かったため,放射性セシウムから放出されるベータ線を計測する手法に切り替える.ベータ線は飛程が短いため,限られた領域の放射能分布のみ計測し,ガンマ線の影響も低減できると考える.ベータ線を計測するために,ガンマ線に対する感度を低減させた薄型のシリコン半導体センサーを用いる計画である.シリコン半導体を用いることで小型軽量化も可能である.しかし樹木には放射性セシウム以外にカリウム40などからのベータ線も混在するため,それらの影響も検討していきながらベータ線計測による放射能汚染状況の計測実現性をめざす.
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Causes of Carryover |
実験やシミュレーションは可能な限り既存の資機材を使用して節約したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CdTe半導体検出器を用いた森林内での放射性セシウム計測が困難であることが分かったため,次年度は薄型シリコン半導体センサーを用いた計測を試みることで森林内での放射能汚染計測を実現させる.
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