2018 Fiscal Year Research-status Report
炭素安定同位体と遺伝的解析による気孔開度評価に基づいた街路樹の環境ストレス診断
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15K00566
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
富田 祐子 (半場祐子) 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90314666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米 篤 九州大学, 農学研究院, 教授 (20325492)
山田 悦 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (30159214) [Withdrawn]
北島 佐紀人 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (70283653)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光合成 / アクアポリン / 水利用効率 / 炭素安定同位体 / 大気汚染 / 街路樹 / 気孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市域において環境ストレスが街路樹に与える影響を調べるため、京都市内に植栽されている街路樹5種について苗木を購入し、乾燥ストレスを与えて生理的応答を調査した。さらに、水利用効率に関わる遺伝子の候補である、アクアポリンのはたらきを解明するため、ユーカリの形質転換体(アクアポリン過剰発現体)を用いて大気ストレスに対する光合成応答を調査するとともに、RNA-seqおよびRT-PCRを用いて遺伝子の発現解析を行った。
(1)街路樹の乾燥ストレス応答:ヒラドツツジ、カンツバキ、シャリンバイ、レンギョウ、クルメツツジの5種を比較したところ、乾燥ストレスに対する応答戦略に明瞭な種間差が認められた。調査した5種の中ではマルバシャリンバイが乾燥ストレスに対して光合成速度も茎の水分もいずれも最も高い維持率を示し、都市域の乾燥に対して高い適応性を有していることが明らかになった。一方、葉の炭素安定同位体比に関してもマルバシャリンバイが高い値を示したことから、上記の高い適応力に高い水利用効率が関与していることが示唆された。 (2)気孔制御に対するアクアポリンのはたらきと遺伝子発現:ハツカダイコンのアクアポリン遺伝子RsPIP2を過剰発現させたユーカリを用いて大気の乾燥ストレスを与える実験を行ったところ、過剰発現体の方が光合成速度が高く維持され、かつ気孔コンダクタンスの減少度合いが緩やかである明らかになった。RT-PCR解析により、RsPIP2遺伝子の発現量が多いほど光合成速度は高くなることが示されたことから、RsPIP2には二酸化炭素の気孔からの取り込み量を増加させ、光合成を高めるはたらきがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、5種の樹木について乾燥ストレスに対する応答の詳細な調査、および研究の最終目的である乾燥ストレス応答の評価を行うことができた。さらに、形質転換ユーカリを用いて、大気の乾燥ストレスに対するアクアポリン遺伝子のはたらきを解明するための電子解析を行うことができた。 (1)低木5種にについて、前年度までに得られた実験結果を併せて解析することにより、街路樹として乾燥ストレスに対する適応性が高い樹種は「マルバシャリンバイである」という明瞭な結論を得ることができた。 (2) 気孔制御に対するアクアポリンンのはたらき:平成29年度から開始した実験に加えて、当初からの計画であったアクアポリン遺伝子の発現量解析を行った。その結果、アクアポリン遺伝子の発現量が大気の乾燥ストレスに対する応答に影響を与えていることを初めて示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、2019年度からスタートした基盤B「都市樹木における適性診断法の確立:アクアポリンを介した気孔応答評価の導入」の助成を受けてさらに発展させる計画である。京都市内における街路樹の調査を継続する。また、苗木の実験により、環境ストレスとして新たに塩ストレスを加え、塩ストレスにに対する光合成応答メカニズムを明らかにする。さらに、「アクアポリン」遺伝子に注目し、モデル植物であるシロイヌナズナの様々なアクアポリン変異体を用いて、光合成応答とアクアポリンとの関連を明らかにする。 (1)街路樹調査、塩ストレス負荷実験:2019年度は、樹種を2種に絞り込み、より多くの調査地で光合成機能と炭素安定同位体比の関係を明らかにし、京都市内を対象にマッピングを行う。 塩ストレスを街路樹に与え、光合成応答の種間差やそのメカニズムを明らかにする。(2)シロイヌナズナ変異体の光合成機能解析:シロイヌナズナのさまざまなアクアポリン変異体を用いて、それぞれのアクアポリン分子種が光合成機能や気孔の応答にどのように関与しているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
消耗品の価格により、若干の差額が生じた。次年度の消耗品の購入のために充当する計画である。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Global transcriptome analyses reveal that infection with chrysanthemum stunt viroid (CSVd) affects gene expression profile of chrysanthemum plants, but the genes involved in plant hormone metabolism and signaling may not be silencing target of CSVd-siRNAs2019
Author(s)
Takino, H., Kitajima, S., Hirano, S., Oka, M., Matsuura, T., Ikeda, Y., Kojima, M., Takebayashi, Y., Sakakibara, H., Mino, M.
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Journal Title
Plant Gene
Volume: 18
Pages: 100181
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Comparative multi-omics analysis reveals diverse latex-based defense strategies against pests among latex-producing organs of the fig tree (Ficus carica)2018
Author(s)
Kitajima, S., Aoki, W., Shibata, D., Nakajima, D., Sakurai, N., Yazaki, K., Munakata, R., Taira, T., Kobayashi, M., Aburaya, S., Savadogo, E.H., Hibino, S., Yano, H.
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Journal Title
Planta
Volume: 247
Pages: 1423-1438
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Cloning and Aggregation Characterization of Rubber Elongation Factor and Small Rubber Particle Protein from Ficus carica2018
Author(s)
Yokota, S., Suzuki, Y., Saitoh, K., Kitajima, S., Ohya, N., Gotoh, T.
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Journal Title
Molecular Biotechnology
Volume: 60
Pages: 83-91
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Towards Microgravity Experiments in Moss (II): Emerging Model Land Plant, Physcomitrella Patens for Experiments on International Space Station2018
Author(s)
Kaori Takemura, Sakito Kitajima, Maki Yokoi, Akihisa Shinozawa, Naoya Sakaguchi, Ryuji Kameishi, Keisuke Nishida, Hiroyuki Kamachi, Atsushi Kume, Ichirou Karahara, Yoichi Sakata, Yuko T. Hanba, Tomomichi Fujita
Organizer
AMS2018
Int'l Joint Research
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