2015 Fiscal Year Research-status Report
ネオニコチノイド系殺虫剤の下水処理場からの排出実態解明と河川水における排出源解析
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15K00573
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
大塚 宜寿 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 主任研究員 (30415393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓑毛 康太郎 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 専門研究員 (40415394)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ネオニコチノイド / 殺虫剤 / 河川水 / 下水処理場 / 排出実態 / 汚染源解析 / 非負値行列因子分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,ネオニコチノイド系殺虫剤7化合物とフェニルピラゾール系殺虫剤フィプロニルの同時分析法を開発してきた。我々が行った先行研究において河川水からの検出率が低かったニテンピラムとチアクロプリドは,環境中あるいは生体中で分解されて他の化合物に変化していることが懸念されため,本研究では,これらの殺虫剤化合物のそれぞれの代表的な分解生成物であるN-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-エチルホルムアミドとチアクロプリドアミドを測定対象物質に追加することとした。また,ヒトの尿からの検出が報告されているアセタミプリドの代謝物であるデスメチルアセタミプリドも測定対象物質に追加することとした。本研究では,測定対象物質として追加した3化合物も同時に測定できるように分析法を改良した。 下水処理場の放流水10試料について,ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルの濃度を測定したところ,ジノテフラン,クロチアニジン,イミダクロプリド,チアメトキサム,アセタミプリド,フィプロニルを検出した。河川水と同様に出荷量が比較的多いジノテフランが他の化合物より高濃度となる傾向がみられた一方で,放流水ではフィプロニルが比較的高い濃度で検出されることを見出した。このように,放流水と河川水での化合物濃度比に差異がみられたことから,非負値行列因子分解による汚染源解析の可能性が示唆された。そこで,埼玉県内38地点で河川水を採水し,ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルの濃度を測定して得られた結果に対して非負値行列因子分解を試みたところ,主要な汚染源は3種類であり,そのうちのひとつの汚染源の化合物濃度比は,下水処理場放流水のものに類似していた。また,この汚染源からの寄与があると計算された地点は,下水処理場放流水の影響が想定される地点であり,妥当な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究であらたに測定対象物質に追加する化合物を検討し,我々が行った先行研究において河川水からの検出率が低かったニテンピラムとチアクロプリドのそれぞれの代表的な分解生成物,ヒトの尿からの検出が報告されているアセタミプリドの代表的な代謝物を選択した。我々がすでに開発したネオニコチノイド系殺虫剤7化合物とフェニルピラゾール系殺虫剤フィプロニルの同時分析法を基に,本研究で追加した3化合物も同時に測定できるように分析法を改良した。 非負値行列因子分解を行うためのプログラムをコーディングし,動作を確認した。また,下水処理場放流水の実測データをあらかじめ汚染源の一つとして与え,非負値行列因子分解を行うプログラムもコーディングし,その動作を確認した。 下水処理場放流水10試料について,ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルの濃度を測定し,ネオニコチノイド系殺虫剤5化合物とフィプロニルを検出した。放流水と河川水で化合物濃度比に差異を見出したことから,非負値行列因子分解による汚染源解析の可能性が示唆された。そこで,埼玉県内38地点で採水した河川水試料の測定結果に対して非負値行列因子分解を試みた結果,非負値行列因子分解を用いた汚染源解析の妥当性を確認することができた。 また,下水処理場の流入下水と放流水について,ネオニコチノイド系殺虫剤とフィプロニルの濃度を測定したところ,大きな差異が認められなかったことから,調査した2施設の下水処理場の処理方法では,濃度をほとんど低減できないと考えられた。 これまでに得られた研究成果の公表を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した分析法を用いて,下水処理場放流水中のネオニコチノイド系殺虫剤とその分解物およびフィプロニルを測定して,これらの河川への排出実態を把握するとともに,流入下水も測定して下水処理過程における分解・除去効果を評価する。下水処理場の放流水およびその上下流地点等の河川水を調査し,非負値行列因子分解による排出源解析に用いる測定データを集積・整理する。得られた河川水等の測定データに対して非負値行列因子分解による排出源解析を行う。これまでに得られた研究成果を公表する。
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Causes of Carryover |
購入資材の値引き等により差金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ネオニコチノイド系殺虫剤およびそれらの分解物等について調査,分析に必要な器具,試薬等を購入する。非負値行列因子分解による汚染源解析に必要な器材等を購入する。
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