2016 Fiscal Year Research-status Report
乾燥地域に位置する廃棄物埋立地の安定化シナリオの構築とその実現技術の開発
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15K00576
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東條 安匡 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70250470)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乾燥地域 / 廃棄物埋立地 / 浸出水 / 安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中東やアフリカなどの乾燥地域に位置する廃棄物埋立地を対象に、埋立物の安定化、浸出水の管理戦略等を明確にすることを目的に実施している。具体的には、次の4点を検討対象としている。(1)浸出水が発生する期間とその量の予測、(2)限定的な発生量の浸出水による地下水汚染の可能性の検討、(3)蒸発による廃棄物の乾燥過程に関する実験的検証、(4)蒸発が卓越する条件を模擬したカラム実験による有機物の分解過程の検討、である。初年度に(1)を実施し、(4)のカラム実験を開始した。このの安定化に係る実験は平成28年度も継続して行っている。一方、平成28年度は特に(3)の検討を行った。乾燥過程を再現する一次元カラムを作成し、内部に砂、紙、布等をそれぞれ単独で充填し、上部には太陽放射を模擬する赤外線ランプを設置し、熱源とした。実験は、飽和状態、自然排水状態のいずれかで開始し、経時的に内部の含水率と温度を層内に埋設したTDR水分計と熱電対で計測した。また、蒸発水量を測定するために重量変化を連続的に測定した。砂の場合、表面から5cmおよび10cmの深さで体積含水率が急激に減少し乾燥が進行した。一方、20cm以上の深部の乾燥はほとんど進行せず、長期間を経ても多くの水分が残存した。これは、砂のような比較的均質な多孔質媒体では、表層の乾燥した部位の体積含水率が急激に減少することで、不飽和透水係数が低下し、毛管水の上方移動が阻害されるからである。一方、深部は微細間隙まで水分が存在しており蒸気の移動する空隙が極めて少ないため内部蒸発が起こらず乾燥が進行しないことが判った。一方、廃棄物(布、紙等)では、表層での乾燥は進行したが、深部においてもゆっくりと一様に含水率が低下していく現象が確認された。これは、廃棄物層の場合、粒子径が大きいために空隙径も大きく、深部においても内部蒸発が可能であるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で設定していた4つの検討課題の内、(1)浸出水が発生する期間とその量の予測については、初年度(平成27年度)に実施し、マクロ水分収支モデルと実際の乾燥地域の気象データから、乾燥地域では、埋立作業が完了すると浸出水の発生は停止すること(発生期間は埋立中のみ)、浸出水は主に埋め立てられる廃棄物中の水分に由来し限定的であること、を明らかにした。(2)限定的な発生量の浸出水による地下水汚染の可能性の検討については未実施であり可能であれば29年度に着手する予定である。但し、埋立地の下部の地層条件について実際の処分場のデータを入手が困難であることが判明している。そのため、平成28年度は、乾燥地域特有の濃厚浸出水処理についての検討を実施した。(3)蒸発による廃棄物の乾燥過程に関する実験的検証については、前記したとおり、平成28年度に重点的に実施し、砂のような均質媒体と異なり、間隙径が大きく不均質な廃棄物層では、表面の乾燥のみでなく深部においても内部蒸発が生じ乾燥が進行することを明らかにした。これは、乾燥地域の埋立地の管理において極めて重要な知見であると思われる。なぜなら、内部が乾燥していくということは、微生物による有機物の分解活動が停止し、廃棄物の安定化が進行しないことを意味するからである。(4)蒸発が卓越する条件を模擬したカラム実験による有機物の分解過程の検討については、平成27年度から開始し、約2年間のデータを蓄積している。降水を与えないカラムでは、浸出水の生成は停止し、上部から乾燥が進行している。一方、浸出水の循環を行ったカラムでは、継続的なガス発生が確認されており、安定化を少しでも進めるためには、浸出水の循環が有効であることを確認している。したがって(2)の課題を除いては順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)についてはマクロ水分収支モデルと実気象データから予測を行ったが、実際の埋立地のデータを用いたキャリブレーションができていない。研究の主たる対象は、乾燥地域の途上国の埋立地を想定しているが、こうした埋立地では浸出水量を測定していない。したがって米国内の乾燥地域の埋立地に打診を行っているが良好な回答は得られていない。平成29年度も引き続き浸出水データの提供先を探していく予定である。 (2)の地下水汚染可能性の評価は、現地のボーリングデータの入手可能性が低いことから、仮想の条件を複数設定し、そのシナリオのもとで解析せざるを得ないと考えている。本検討項目は本年度実施予定であるが、実現性が低い場合には、乾燥地域特有の濃厚浸出水の処理方法の検討に変更する。 (3)の乾燥過程の実験については、平成28年度に実施したが、本年度は、モデル化を行い、水分、蒸気、熱の多成分移動モデルから実スケールでのシミュレーションを試みる。さらに、筆者が過去に作成した有機物分解モデルと連結し、乾燥過程と有機物の分解を同時に計算可能なモデルとして、乾燥地域の埋立地の安定化モデルを完成させる。 (4)の安定化のカラム実験は既に2年を経過したので、本年度に完了させ、各元素のマスバランス(分解(ガス化、浸出水)、残存)を算出する。このマスバランスから、浸出水の循環の効果を評価する。
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Causes of Carryover |
当初計画においては、乾燥地域の処分場を訪問し、ヒアリングとデータ提供依頼をする予定で海外旅費を計上していた。平成28年度に乾燥地域であるケニアのダンプサイトの調査を行ったが、それ以外にも米国の現地調査を行う予定であった。しかし、データ提供に協力的な処分場が見つからず、現地調査を実現させることができなかった。結果的に次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度内に、米国内で浸出水量のデータ提供に協力可能な処分場を見つけ、現地調査を実施する予定である。また本年度は、安定化カラム試験の解体予定であり、それに伴う分析用の薬品、ガラス機器、電極等に使用する予定である。
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