2015 Fiscal Year Research-status Report
ウキクサ科植物の葉状体の機能強化とコベネフィット型植生浄化プロセスの開発
Project/Area Number |
15K00580
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
田中 靖浩 山梨大学, 総合研究部, 助教 (50377587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠山 忠 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60431392)
森 一博 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (90294040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウキクサ / PGPB / 葉状体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、浮遊性の水生植物であるウキクサ亜科植物とその共生微生物群集との相互作用を利用した植生浄化システムにおいて、これまで全く注目されることのなかったウキクサ亜科植物の葉状体に生息する微生物にスポットライトをあて、その有用性や系統的な新規性を評価しながら、これを利用することで高い水質浄化能を持ちつつエネルギー生産をも担う新しい高機能植生浄化システム(コベネフィット型植生浄化ユニット)を開発することを目的としている。 平成27年度は3種のウキクサ亜科植物(ウキクサ、アオウキクサ、コウキクサ)の葉状体から分離した微生物をターゲットとし、植物生育促進微生物(Plant Growth Promoting Bacteria;PGPB)と有害化学物質分解菌の検索を行った。まず、PGPBの検索については、微生物フリーのコウキクサに比べて、2.5倍以上の生育促進効果を有する菌株を9株得ることに成功し、その中にはこれまでに世界で4例しか分離例が無く、難培養性の細菌群として知られるArmatimonadetes門に属する菌株も含まれていた。次に、有害化学物質分解菌の検索については、フェノールやトリクロロエチレンの分解に関与する酵素(フェノールヒドロキシラーゼ)を持つ菌株をターゲットとした。その結果、フェノールで馴化したウキクサの葉状体から27株の当該分解菌を得た。これらの菌株の16S rRNA遺伝子を取得し、系統解析したところ、Zoogloea属、Hydrogenophaga属、Pseudomonas属、Asticcacaulis属、Dechloromonas属、Rhodoferax属、Azohydromonas属のいずれかと近縁であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ウキクサ亜科植物の葉状体から植物生育促進微生物(PGPB)と、有害化学物質分解菌およびその両方の能力を有する微生物を取得することを目的としていた。「研究実績の概要」に示したように、PGPBの検索については、2.5倍以上の生育促進効果を示す菌株として計9株を、有害化学物質分解菌についてはフェノール分解菌(フェノールヒドロキシラーゼ遺伝子保有株)を27株取得することに成功した。有害化学物質を分解できるPGPBについては、現在検索中であるが、PGPBの検索時に2倍程度の生育促進効果を示す菌株が高頻度で得られたことを考慮すると(スクリーニングに供した菌株の約50%)、上記27株中にもPGP活性を有する菌株が数株は含まれていると考えている。従って、現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断できることから、今後の研究推進方策としては、基本的には当初の予定どおりとする。すなわち、取得したPGPBについては生育促進メカニズム(因子)に関する解析を、有害化学物質分解菌については酵素・遺伝子レベルでの特性評価を行う。また、余力があれば、初年度に引き続き、葉状体からの新たなPGPBと有害化学物質分解菌の検索も実施する予定である。
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