2016 Fiscal Year Research-status Report
環状オリゴ糖を用いた新しい放射性ヨウ素回収・保持システム開発に向けた基礎的研究
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15K00581
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
廣田 昌大 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (50443073)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射性ヨウ素 / ヨウ素131 / 汚染水処理 / 環状オリゴ糖 / シクロデキストリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、活性炭に代わる新しい放射性ヨウ素回収・保持材の開発に向けて、環状オリゴ糖(シクロデキストリン:CD)の基本特性を解明することであり、平成28年度は次の3点について研究を行った。 前年度の基礎実験において放射性ヨウ素I-131の吸着効率が最も高かったα-CD誘導体(CD-活性炭結合体)について液体中のヨウ素濃度と捕集効率の関係を解明した。I-131溶液10gに、α-CD誘導体0.1gを投入し、5日間静置したところ、I-131の濃度が1kBq/cm3から100GBq/cm3に相当する範囲において、吸着効率は80%でほぼ一定であった。一方、100TBq/cm3に相当する濃度では、ヨウ素はほとんど吸着されなかった。ヨウ素治療を受けた甲状腺癌患者の尿のI-131濃度は1.6MBq/cm3、福島原子力発電所事故直後に2号機タービン建屋で採取された高濃度汚染水のI-131濃度は13MBq/cm3である。放射線管理上取り扱うの汚染水の多くは、I-131濃度が100GBq/cm3よりも低いと思われる。このことから、CDは汚染水の処理に対して十分な性能を有していることが確認できた。 次に、水溶性CDに包接されたI-131の水溶液10gに活性炭1gを投入したところ、上記実験と同じくI-131の吸着効率は80%になることを確認した。液体中にて飛散防止のために水溶性CDに包接させたヨウ素を除去する場合、液体中で水溶性CDと活性炭を反応させてCD誘導体を形成させることにより、ヨウ素を除去できることを確認した。 最後に、尿に含まれる成分が、CD誘導体のヨウ素吸着に与える影響を評価した。人工尿を用いた実験により、アンモニアや尿素が存在すると、I-131の吸着効率が20%程度に低下したが、予め陽イオン交換樹脂に流した上で同様の実験を行ったところ、吸着効率が40%以上に上昇することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、[1]液体中のヨウ素濃度と捕集効率の解明、[2]熱・放射線耐性の評価、[3]不純物がヨウ素の回収に与える影響の評価、[4]水溶性CDから不溶性CDへの包接ヨウ素移行法の構築、[5]気体中に拡散したヨウ素の捕獲効果の検証の5項目について検証することを計画していた。 当初、平成27年度に上述の項目[1]、[2]を、平成28年度に項目[3]、[4]を、そして平成29年度に項目[5]について行う計画を立てていた。しかし、平成27年初頭にCDと活性炭を組み合わせた新しい不溶性CD(CD誘導体)が開発されたことを受けて、平成27年度に、当初の計画になかった項目[0]放射性ヨウ素の捕集に向けたCD誘導体の性能評価”を行い、この結果を踏まえて、平成28年度に項目[1]は実施する様に計画を変更した。平成28年度は、項目[1]、[3]、[4]の3点について検証したことから、当初の計画において平成28年度末までに実施する予定であった4項目全てについて既に実験を終えている。以上のことから、本研究は、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験では、概ね良好な結果が得られているため、予定通り、[5]気体中に拡散したヨウ素の捕獲効果の検証の実験を行う。ただし、[3]不純物がヨウ素の回収に与える影響の評価において、尿に含まれるアンモニアや尿素がCDによるヨウ素の吸着を妨げるが、陽イオン交換樹脂に通すことで、アンモニアや尿素による妨害を改善させることが出来る可能性があることが分かったものの、汚染水にアンモニアや尿素が含まれていなければ、CD誘導体のI-131吸着効率が80%であるのに対して、それらが含まれていると、陽イオン交換樹脂を用いたとしても吸着効率は40%程度と、1/2の水準に留まっている。文献調査によると、CDは酸やアルカリ、加熱処理にに強いとされている。そこで、汚染水中にヨウ素がCDに吸着するのを妨害する物質が含まれていたとしても、より多くのヨウ素を吸着除去することが出来る方法として、汚染水に酸やアンモニアを加えてアンモニアや尿素を分解させる方法や、陽イオン交換樹脂の量を増やす方法、加熱分解する方法等も検討して行く予定である。
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Causes of Carryover |
一部消耗品について、当初よりも安い価格で購入することが出来たため、若干の残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度要求額と合わせて、消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)