2015 Fiscal Year Research-status Report
出水撹乱に対する河川生態系の応答のモデル化と河川環境管理への応用
Project/Area Number |
15K00592
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉村 千洋 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10402091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
サーベドラバレリアノ オリ 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (60595536) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 河川生態系 / 出水撹乱 / 生息場評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では分布型水文モデルを基盤として、流量変動による河床撹乱に対して河川生態系が示す応答を流域スケールで解明・モデル化し、そのモデルを河川環境管理に活かす方法を開発することを目的としている。平成27年度は主に相模川流域を対象として以下2つの課題に取り組んだ。 始めに、流況分布の再現を目的として分布型流出モデルを作成した(課題1)。相模川と利根川を対象として、分布型水文モデル(GMHM)により出水撹乱を含めた流況を空間的に内挿した。これにより、流域内の本川および主要な支川のすべての区間(250mごと)において、1時間毎の流量を出力することができた。その上で、幾つかの水利用シナリオに対応する流量を推定し、水生生物の生活史に関連する流況改変指標を用いることで流域内の流況およびその改変度を定量評価した。 次に、出水撹乱に対する河道内地形の応答を衛星画像に基づき評価した(課題2)。河道内地形の空間分布を把握するために、既存の航空写真や衛星画像(ALOS)を入手し、可視光と近赤外の反射輝度を使い水面抽出を行うことで河道形状を評価した。そして、4年間の衛星画像を幾何補正することで重ね合わせが可能となり、経時的な河道変化を定量的に評価した。さらに、水深推定が可能な範囲では、河道内地形を水生生物の生息場に着目して分類(瀬、淵、ワンドなど)し、水際線および生息場構造の経時的な変化を整理することも可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の交付申請書に記入した研究目的および手法の中で、研究実績の概要に記した通り研究の核となる課題1と課題2を実施することができた。課題2については定点カメラの画像も組み合わせて研究を進める予定であったが、河川工事等の影響があり予定通りの成果が得られない部分もあった。しかし、衛星画像に基づく河川形状の評価を幾何補正や精度評価などを含めて丁寧に進めた結果、今年度の目標を十分に達成することができた。よって、平成27年度の研究はおおむね順調に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の全体計画に沿う形で、平成27年度の水文モデルや衛星画像を使った研究を継続しつつ、出水撹乱と河床付着膜および魚類群集の関係に関する研究を進める。河床付着膜については相模川流域の河床付着膜を用いた実験とそのモデル化を行い、また魚類群集に関しては分布川流出モデルから出力される流況の評価を基盤として種分布モデルの作成を行うことで流量変動と水生生物群集の関係をモデル化する。このように、河川生態系の動的特性の理解を進め、さらには水資源や河川環境の管理を効率的に実施する方法を提案する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に計上していた消耗品の予算を、平成28年度に予定しているモデル解析に充当するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に予定している魚類分布モデルの作成に活用する。
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