2016 Fiscal Year Research-status Report
電気培養高活性鉄酸化細菌の諸性質解明と重金属資源回収システムの開発
Project/Area Number |
15K00593
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 文章 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (90294446)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 鉄酸化細菌 / A. ferrooxidans / 高活性株 / 環境浄化 / 資源回収 / 生化学的解析 / 電気培養 / 微生物固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の特徴は,これまで 300株を超える非常に多くの鉄酸化細菌 Acidithiobacillus ferrooxidans の単離株の中から目的に応じた銅のリーチング,水銀の気化等の高活性株を有していることである。これらの菌株は,重金属が溶出しやすい酸性条件下で生育するためにバイオリーチング,バイオボラタリゼーション技術として利用できる。前者は高活性株を使用することで,従来の技術に比べ高効率化が可能であり,特に,後者は特有の生物機能を活用することで,水銀を生物濃縮するのではなく,金属水銀として気化する活性が強く,従来の吸着技術と組み合わせることで適正に水銀を回収できるものである。水俣条約にも関連し,水銀汚染された土壌・地下水等の浄化技術として期待されている。これらの菌株は,増殖が遅いという課題があったが,長年開発を進めてきた独自の電気培養法を用いて高濃度培養が可能となり,有能酵素の精製等によって生化学的諸性質の解明が進んできた。さらに,得られる高濃度菌液を実際の現場で活用することで,本研究の課題である銅などの重金属回収,水銀についての環境修復を省エネルギー的に実施する見通しを得た。また,高濃度菌体が得られるようになったために,連続培養により活用あるいは担体を用いた固定化微生物の活用によって,活性の持続化,連続使用,高効率化及び装置のコンパクト化も可能となるために学術的にも技術的にも非常に意義がある。鉄酸化細菌を活用した水銀のバイオレメディエーションに関する実用化例は国内外ではなく,一連の高活性株を活用した一連の研究は,省エネルギー的・経済的な重金属回収技術として進展できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で使用する鉄酸化細菌 Acidithiobacillus ferrooxidansは,増殖が遅いために,電気培養装置の改良を重ね,通常の通気培養に比べ,2~5リットル程度の培養液で,数百倍の高濃度培養が可能となり,重要な酵素精製及び生化学的な解析を進めてきた。 特に,水銀に強い耐性を持ち,無機及び有機水銀から金属水銀として還元気化する高い活性を持つ A. ferrooxidans MON-1 株及びさらにその誘導株A. ferrooxidans FT 株は,水銀を含有する廃液,地下水,土壌の環境浄化に活用できることを確認した。また,高度な銅リーチング活性,すなわち銅鉱石等に対して銅の溶出が著しく高い A. ferrooxidans D3-2 株は,バクテリアリーチングに活用できる。これらの株と従来から様々な諸性質がよく判明されている標準株の A. ferrooxidans ATCC 23270 株等の電気培養で得られた洗浄細胞,精製酵素を用いて,鉄酸化酵素系等に係わる鉄酸化活性,金属水銀(Hg0)気化活性,更に Cytochrome c oxidase 等の諸性質について比較しており,環境浄化及び資源回収に係わる諸性質が分かってきた。誘導株についても再度生物同定試験(遺伝子解析法) ,微生物同定試験A. ferrooxidansと高い相同性が得られており,バイオレメディエーション利用のために必要な諸性質,中性領域等における利用,低温時に使用できる誘導株の育種等について検討した。
|
Strategy for Future Research Activity |
高度水銀耐性株である A. ferrooxidans MON-1 株及びさらに誘導株A. ferrooxidans FT 株は,水銀を含有する廃液,地下水,土壌中の水銀を金属水銀として気化する活性が著しく強いので,既存の気化水銀をトラップする装置との組み合わせで気化回収が可能であるために,従来の高温による高いエネルギーを要する回収技術と異なり,新規の応用技術としての実用化の検討を進める。本株は,NADPH 依存性の水銀還元酵素活性を持つとともに二価鉄依存性の新規の水銀還元システムとして,鉄酸化酵素系の重要成分であるCyt. c oxidase が水銀の気化に重要な役割を持っていることが示唆されており,それらの株及びさらに誘導株について完全に精製した酵素を用いても明確にする。 本菌は酸性条件下で成育しやすい菌であるが,これまでの基礎実験では,中性及びアルカリ性の水銀汚染土壌においても,電気培養液の使用で気化活性を得られている。これは,菌体を取り巻く様々な微環境(pH,温度,無機栄養塩等)の影響が考えられるために,固定化微生物法による効率化と再利用,阻害の抑制効果等の検討を行う。また,固定化物の活性の持続性,流動層あるいは固定層としての装置化,鉱山,土壌への散布等について好ましい条件を調べる。連続的な電気培養装置を含めた総合的なシステムとして開発を進める。また,本株を実際技術として活用するうえでの「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」に基づく浄化事業計画を策定する。
|
Causes of Carryover |
初年度予定していた微生物カプセル(固定)化装置一式について,様々な検討を重ね,既存の種々の機器を活用して簡易な装置を作ることができた。その装置で作成した固定化微生物を使用した実験において,長期的な活性を評価する必要があり,年オーダーの種々の保存等による活性の持続性を確認する必要があった。 高活性株の単離・誘導株の取得,電気培養技術,固定化微生物等の技術開発は,ほぼ確率したと言えるが,今まで得られた技術を総合的なシステムとして活用するための諸条件の検討,また制御方法についての応用研究の段階となっており,まずは様々な情報を入手する作業が必要であった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後実用化を目指して,電気培養装置の改良,固定化微生物として長期活性維持方法の検討,装置のコンパクト化の検討,さらにバイオレメデェーションの技術に関する情報の共有化(登録)に関して計画的に進める。
|